文化系のためのスポーツ読み物・映画とか③ ~『ベイビーステップ』(1) ただ上手くなりたいだけなんです ~

結局のところ、バドにしか興味ないんですよ。ここ一年ぐらい映画なんて2,3本ぐらいしか見てないし、本もスポーツ関係の本しか読まないようになりました。このブログだって、スポーツ関係のものに関連づけて書けるようなテーマ設定にしたんです。

 

私は6時に起床して、家の近くにあるバドミントンができるスペースで一人で1時間ぐらい練習してから出勤するという生活を1年続けましたからね、あの無気力人間の私が。ラジオ体操1日しか続かなかった自分がですよ。これは、自分でもびっくりです、こんなに熱くなれる自分がまだいたことに。

 

まあ、ハマってるっていうんでしょうね、こういうの。ええ、自分でも思います、これはちょっと尋常じゃないなと。でも、こういう尋常ではないことをやってみたかったんです。これは、たった一人のオリンピックですよ、わたしにとっての。で、結果が出てるかっていうと、点数で言うと70点ぐらいですかね。バドミントン歴1年チョイの中年にしては、結構頑張ってる方じゃないですか。だけど、やっぱり部活経験者と対戦すると全く試合にならないですね。彼らはちょっと次元が違う別のステージにいるということを対戦するごとに実感します。

 

若くもない、突出した身体能力もない、もちろんスキルもない人間がどうやって、彼らに追いつくか。自分が彼らより秀でているところを考えましたよ。相手は部活経験者しかも若い、彼女持ちときたら、三重苦でしょ。おじさんヘレンケラー状態ですよ。そりゃウツになりますよ。それでも、考え続けました、ラジオでタマフル聴きながら。そしたら、宇多丸さんが言ってました。K・U・F・U」 工夫しろと。 

 

その時、わたし見つけたんですよ、自分が彼らより秀でているところを。それは、このご時世にラジオ聴いているというところ、オタク的なところだと。わたし負けませんもん、ハードバップとビ・バップの違い言えますもん。内向の世代と第三の新人すらすら出てきますもん。

 

皆さん、『ベイビーステップ』(作・勝木光)っていう漫画知ってますよね。これ有名な漫画みたいじゃないですか。私漫画をあまり読まないので、知らなかったのです。知ったきっかけは、好きな文筆家の荻原魚雷さんの文章です。魚雷さんというのは、高円寺在住の文筆家で、古本に関するエッセイ等で有名な方です。友人を通じて知り合い、2回ほどお話しさせていただきました。基本的に小説等の古本に関する文章が多いのですが、本のタイトルが『本と怠け者』、『閑な読書人』、『借家と古本』とかあまり前向きではないタイトルが並んでて、最高なんです。この人の本になんど助けられたことか。やる気がないことを肯定してくれるような文章なんです。やる気がない自分をどうにかしてやる気を出させるのではなく、やる気がでないままやり過ごす的な。

 

で、その魚雷さんの文章の中に、『ベイビーステップ』が出てきたんですよ。魚雷さんは、フリーランスの文筆業としてどのように生き抜いていくかについてのヒントをスポーツ関連の書物に求めたりしてます。その一つが『ベイビーステップ』なのです。

 

江戸川乱歩、『ベイビーステップ』の主人公、エジソン、アインシュタイン、この4人の共通点わかります?それはメモ魔ということです。記録をつけるのが大好きということ。15歳からテニスを始め、わかりやすい身体能力も持っていない『ベイビーステップ』の主人公エーちゃんは、几帳面な性格から練習や試合の気づきをノートに細かく記していきます。そして、そのノートの分析をもとに戦略を立て、勝ち抜いて行くというストーリーなのです。そして私も、オタク気質の人間のご多分に漏れず、記録は嫌いではないです。基本ねちっこいですから。

 

まあ、この漫画は初心者が上達していく物というジャンルに括られる漫画ということになるでしょうが、その姿勢や作中の上達理論がバドミントンをやっている自分にとても参考になるのです。主人公が自分の試合の1球1球のコースや種類を、ノートに記していることを知ったコーチが言います。

 

「テニスは球を打った時の感覚とその球がどこに落ちたかという認識、このふたつが備わった確かな1球を打ってはじめて上達する。この1球の蓄積こそが上達なんだ」(『ベイビーステップ』第2巻より)

 

やみくもに球を多く打つのではなく、1球1球のフォーム、球筋、落下点をしっかりと認識しながら練習することが重要だと説くのです。自分もバドの練習の際、たくさん打ったその疲労感だけで満足してしまって、内実は効果的でない練習をしてしまうことが多々あります。1球1球を意識して打つということは、簡単そうに見えて非常に難しい。その認識を手助けするのが、ノートなのです。まあ試合中の全配球を覚えノートに記録しているというのは、非現実的でいかにも漫画的なのですが、実際に強い選手というのは自分の配球を結構な割合で覚えているらしいです。

 

この作品では、W・T・ガルウェイの『インナーテニス』を引合いにだし、メンタル面での上達理論についても描かれてます。私はこのガルウェイの本をバスケットボールをやっていた高校時代に読んだのですが、まさかこの漫画で出てくるとは、思いませんでした。まさに文化系的スタンスでスポーツをやるべき運命は、あの高校時代から決まっていたのです。

 

「(ラケットを早く引け)などと指示する自分が優勢の状態は案外うまくいかない。意識しすぎて金縛りになってしまうからだ。逆に(ボールで線を引こう)などと何かを実行する自身が優勢になって指示する自分が消えた時、人は最高のパフォーマンスを見せるという」(『ベイビーステップ』第4巻より)

 

1球ごとに意識を配り、正しいフォームで打ち、それが血肉化され無意識にアウトプットできるようになった時にはじめて人はよいパフォーマンスを見せるのです。しかし、この意識と無意識のバランスが非常に難しい。たとえばスマッシュを打つ際に意識するポイントは、足のスタンス、体幹の回転、腕の回内、インパクト時の握りしめ、等多々あるのですが、それらを最初から一度に意識するのは難しく、一つ覚えられとしても、そこに集中することで他の要素への集中が抜け落ちるという感じです。これをある程度の形までに持っていくのは、結局反復練習するしかないのですが、そこら辺の描写も、実際にスポーツをやりこんだことのある人間ならではのリアリティがあり、共感できます。主人公は、この几帳面さと動体視力等の優れた「目」の能力を活かし、勝ち進んでいきます。

 

今のところ全47巻のうち5巻までしか読んでおりません。この時点で私がこの作品について思うことは、ヒロインのなっちゃんがかわいい、なっちゃんのあれがでかい、プレー中のなっちゃんのあれが見えそうで見えない、上達理論がまあまあ使える、田中麗奈って、なっちゃんって呼ばれてたのを思い出した、なっちゃんと付き合えるならテニスに転向してもよい、『夏子の酒』ってあったな、等々でした。

 

読んだらまた書きます。

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