ゲスい音楽。The ピーズ 「マスカキザル」について

人間、生きていれば、色々な気分になることがある。品行方正で、良識のある人間でありたいとは思うが、毎日、常にそうであるのも難しい。 時には、ゲスい気分になることもある。

 

情けないことかもしれない。私はゲスい気分を捨て去り生きれるほど悟りの境地には至れていない。むしろもがいている。

 

ゲスい気分の時は、ヤケ酒を飲むような勢いで、聴いてしまう音楽がある。それは、The ピーズ、1990年のアルバム、「マスカキザル」。

全10曲、28分。驚くほどに、ゲスい曲しか入っていない。

 

 

The ピーズは、男の情けなさ、やるせなさ、哀愁といった湿度の高いものを、乾いたロックンロールサウンドに乗せて燃え上がらせる3人組バンド。そして、The ピーズの中でこのアルバムほど、ゲスい曲だけで占められたものもないと思っている。スリーピースのパンキッシュなロックンロールに乗せて、モテ要素ゼロのゲスい情けなさが叫ばれる。

 

とりあえず、曲目を見てみれば、そのゲスさの一端が垣間見えるかと思う。

 

1 いいコになんかなるなよ

2 どっかにいこー

3 けばみ

4 やったなんて

5 マスカキザル

6  オナニー禁止令

7 Tel してこい

8 ぼけつ

9 いんらんBaby

10 バイ菌マン

 

 

それぞれの曲で歌われていることの字面だけ受け取れば、粗野で露骨な性的欲求の吐露でしかない。

 

しかし、曲として聴くと、その根底にやるせなさ、無常感、苛立ちの気分があるのがわかる。

 

性的にオープンで、豪快な人たちのやっている音楽ではない。むしろその逆で、シャイで繊細な人たちのやっている音楽だから、やぶれかぶれ感と虚しさと欲望と浅はかさが混ざり合っている。

 

1曲目、「いいコになんかなるなよ」では

 

“いいこになんかなるなよ

頑張ったって無理だ

変わろうたって無理だ”

 

“君はカスだよ

かなりカスだよ

どうせカスだろ

かなりカスだろう”

 

と歌われる。

 

坂口安吾の堕落論のようだ。

善良であろうとしたって無駄だぜ、本質はカスなのだから。堕落することで救われるのは、戦後の闇市の混乱のみならず、普遍的なことか。

 

 

http://www.youtube.com/watch?v=mrwVM4xLqL0

いいコになんかなるなよ、の他、名曲「けばみ」み含むライブ映像

 

6曲目、「オナニー禁止令」。この曲の中のあるフレーズは、フィッシュマンズの「BABY BLUE」という曲の中で引用されている。 表面的な音楽ジャンルは全然違うが、Theピーズとフィッシュマンズの意外な、興味深いつながりを知ることができる。

 

 

 

http://www.youtube.com/watch?v=-hNzSem1agA

オナニー禁止令、ライブ映像。

かっこよすぎてやばい。

 

 

 

 

http://www.youtube.com/watch?v=pfCt0J8GKCI

フィッシュマンズ、BABY BLUE。「意味なんかないねー 意味なんかないねー」の部分がオナニー禁止令からの引用。

これもかっこよすぎ。いつまでも浸っていたい。

 

 

 

 

 

8曲目「ぼけつ」は、これもまたすごい。

年がら年中墓穴掘ってるぜ、っていう曲なわけだが、”ぼけつ”が何を意味するか、以下のように歌われて、わかる

 

“おけつの近所にあるぼけつ”

 

「ぼけつ」を掘りすぎて、墓穴掘ってるぜ、という。

 

そして、アビさんこと安孫子義一のギターリフがかっこいい。

 

 

9曲目「いんらんBaby」では、異常性愛な欲求が歌われている。

 

“名前なんかどうでもいい 育ちなんかどうでもいい  いんらんBaby 独り占め  イクわよって 言ってよね”

 

と始まり、

 

“遠くのほうの別荘で  縄で縛って飼いならし  監禁放題したいぜ”

 

とくる。

 

http://www.youtube.com/watch?v=yr4PYgIRMVQ

いんらんBabyを含むライブ映像

 

欲求のままに果たした後の、あの後ろめたさ、あの嫌な感じ。それをわかっていながらも、そういう願望を持つ自分に苛立ち、開き直り、情けなく思ってウダウダしている。そういう願望自体にも嫌気がさしたり、またそれを抱いたり、悪あがきしている。そんな音楽。

 

30分のロックンロール。心の慰め。 「マスカキザル」、名作です。

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映画、音楽、本のことを中心に、役に立つかどうか度外視して書きたいこと書こうと思っています。サブカルなイベントもよく行くので、そのレポートみたいなことも書くかもしれません。