家庭を築くことの潜在的不安を描いた映画3選

結婚して子どもを授かり家庭を築く。それは、人生の階段登ること。福山雅治も「家族になろうよ」と感動的な調子で歌にして、吹石一恵と結婚をキメこんだ。

しかし、昨今の晩婚化の傾向から垣間見えるのは、中途半端に若い人々が抱える、結婚して子どもを育てることの潜在的不安感。なんとなく、ダラダラと結婚できない状態が続くのは、相手がいないとかそんなことより、この不安感によるものが大きいのではないか。

そんな、結婚して子どもを育てることの潜在的不安感がテーマにある映画を3つ選んだ。

イレイザーヘッド/ERASER HEAD (1977)

監督デイビッド・リンチ
脚本:デイビッド・リンチ
出演:ジャック・ナンス、シャーロット・スチュアート

全編通して音楽が不気味。工場の音なのか、風の音なのか。とにかく場末感が凄まじい。

ヘンリーとメアリーの間にできた、魚のような顔をした未熟児?奇形児?がもたらす悪夢。男女の生殖活動の結果である子どもがここまでの悪夢として描かれるのはどういうことなんだ一体。

メアリーが出て行っちゃって、ヘンリーがひとりで子育てに奮闘するわけだが、子育てのキツさを煮詰めて塗ったくったかのような育児ライフっぷりに目眩がする。

魚みたいな赤ん坊の育児ライフもだいぶ地獄だが、ほかに印象的な悪夢描写としては、”IN HEAVEN EVERYTHING IS FINE”(天国では すべて大丈夫)というフレーズを繰り返す曲を、ほっぺたが膨れ上がった女性が歌う場面。なぞのへその緒のような、臓物のようなものがたくさん降ってきて、踏むと白い液体でる。


天国では すべて大丈夫

ラスト、ヘンリーの首が吹っ飛ぶ。それが床の血の水たまりに沈み、ストリートに落っこちる。子どもがそれ拾って鉛筆工場に持って行っていく。ヘンリーの頭をドリルで削ると、「鉛筆の上につく消しゴム」ができる。消しゴムヘッド…。

結婚を視野に入れた恋人ができたら、イレイザーヘッドを一緒に観て、覚悟を確かめたい。

青春の蹉跌 (1974)

監督:神代辰巳
脚本:長谷川和彦(太陽を盗んだ男の監督、濡れた荒野を走れの脚本)
出演:萩原健一、桃井かおり、檀ふみ、森本レオ

青春の蹉跌のテーマともいえるメロディのリフレインが印象的。

萩原健一演じる男、賢一郎は、司法試験に合格し、金持ちの娘の檀ふみと婚約しながらも、桃井かおり演じる女子高生と情事を重ねる。そのツケは、どう逃げても払うことになる。なぜ彼は、自分を追い込むようなことをしたか。それは青春か。退屈だったのか。司法試験の合格の先にあるもの、結婚の先にあるものが、彼の潜在的不安感と共鳴したのだろうか、

“WHAT TO DO NEXT”というキャッチフレーズが用いられたゼロックスによる赤ん坊をフィーチャーした広告が、サブリミナルに挟み込まれる。 主人公の男の、潜在的不安をそこに投影しているかのようだ。

萩原健一の気怠さと男臭さの絶妙な風貌がこの70年代の、学生運動の熱狂の後の時代の白け感、アウトロー感とジャストフィット。めちゃくちゃかっこいい。

安定の先にある退屈への警戒感、先の見えない不安感。70年代の大学生、ヤングアダルトの心情を真空パッキングした、普遍的名作。


青春の蹉跌のテーマ

結婚の条件/She’s having a baby(1988)

監督:ジョン・ヒューズ
脚本:ジョン・ヒューズ
出演:ケビン・ベーコン、エリザベス・マクガバン

まだ夢を捨てきれないボンクラな夫と、子どもを授かりたい妻の若い夫婦が子供を授かることを通して大人の階段を登る話。80sなサントラが気持ち良い。

ケビンベーコン演じるジェイクはいつか作家になりたいという夢がありながらも広告会社でしぶしぶ働いている。彼は会社勤めの窮屈さ、郊外の近所のやつらの退屈さを日々嘆く。なにも考えず退屈さ窮屈さに順応できたのなら! と苦悩する。

そんな中、妻のクリスティンはピルを飲むことをやめ、子どもをつくる決意をする。しかし、ジェイクはまだ心の準備ができておらず、それに加えてジェイクの精子に問題がありなかなかうまくいかない。

ドタバタしながらも、なんとか妊娠、そして、出産を迎える。出産を待つ間、ジェイクは走馬灯のように2人で過ごした日々を思い出し、涙を流す。まるで、クリスティンがもう死んでしまうかのような。妻の出産を通して、ジェイクはやっと、少し大人になる。

妊娠出産において万事、腹を決めてリードしていくのは妻のクリスティン。家庭を築くことの潜在的不安だなんて甘っちょろいことを言っているのは、男が大半なのかもしれない。文科系アラサー男の軟弱さ。

なんてことない映画なんだが、なんだか心に迫るのは、若い男女が結婚し、子どもを授かり、成長していく、という物語にリアルと切実さを感じるからだろう。

若き日のケビン・ベーコンがなんだか新鮮。そして、エリザベス・マクガバンが知的で芯があってキュートですごくいい。

エンドロールが秀逸なので最後まで観てみてほしい。イレイザーヘッドと併せて観ると、うまくバランスがとれるかもしれない。

以上、家庭を築くことの潜在的不安を描いた映画を3つ選んだ。

結婚生活や子育ては絵空事のように多幸感ばかりがあるものではないにしろ、尊い人間的営みであると思いたい。油断をすると、頭の片隅であの曲が流れてくる….


天国では すべて大丈夫

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です