バドミントンの試合が先日終わり、今日は練習がなく、
ふとロンパーチッチに行ってみようと思った。
ロンパーチッチとは中野の新井薬師にあるジャズ喫茶である。ジャズ喫茶とは、
ジャズを聴かせる喫茶店のことだ。そんな説明が必要なほど、
いまではもう過去の遺物化してしまったジャズ喫茶であるロンパーチッチを営んでいるのは、
おそらく30代後半ぐらいの夫婦である。
60年代、日本に学生運動が起こり、若者たちに反骨のエネルギーが充満していた頃、
ジャズという音楽はその反骨の象徴の一端であり、街にジャズ喫茶がいくつも誕生した。
しかし、時代は流れ、若者は変わり、今ではそれらの店はほとんど残っていない。
私は都内のジャズ喫茶はほとんど行ったと思う。
新宿のDUG、吉祥寺のメグ、四谷のいーぐる、渋谷のメアリージェーンなど、
老舗と呼ばれるジャズ喫茶は例外なく入りにくい。よほど音楽が好きで、
もしくは学生運動くずれ・60年代マニア?みたいな人間でなければ、
ジャズ喫茶には入らないだろう。
で、このロンパーチッチである。
それらの敷居の高さをできる限り排除しようと思ったらしい。
ここには、ノラ·ジョーンズをリクエストするにわかファンを笑う悪しき玄人臭はない。
店内は清潔だし、マスターもしっかり気難しそうだが(悪い意味じゃ決してなく、ジャズ喫茶には必要な要素なのだ)、
それを奥さんの気立ての良さが絶妙に中和しており、
これ以上ない絶妙な距離感を醸し出している。
しかし、居心地さだけで安易に客に迎合しているのでは決してない。
選曲は芯が通ってるし、JBLのスピーカーから流れる音は、しっかりとジャズ喫茶のそれだ。
いまこの文章を店内で書いているのだが、例えばメグやいーぐるだったら、
店内でキーボードを叩けば、自分が店内から叩き出されそうな雰囲気がある(キーボードが原因ではないが、実際叩き出されたことある)。
しかし、ロンパーチッチでは、主人公である音楽に気遣いながらであれば、
キーボードを叩けそうな気がする(今のところはまだ怒られていない。たぶん大丈夫だろう)。
蔵書も、チェット・ベイカーの評伝から『とんかつDJアゲ太郎』まで硬軟織り交ぜており、
懐が深い。もちろん、コーヒーは十分及第点、ゴルゴンゾーラのペンネもうまい。
まあ何が言いたいかって、この店は素晴らしいってことだよ。
なにがジャズ喫茶だとかカフェだとかそんなのどうでも良くなるぐらいイカしてるってわけだな。
きみがジャズなんかが好きだったら、今にでもそのくだらない勉強とか用事だとかを放り投げてさ、
すぐに行ってみることだな(ホールデン風)
私はこの店を開いた若い夫婦の気概を尊敬するし、素直にこの店が長く続くのを願っている。
だから、来月もきっとこの店を訪れると思う。