びっくりすることもない日常。
びっくりハラハラどきどきの映画を観てきた。
それは、クワイエットプレイス/A Quiet Place (2018)。監督はジョン・クラシンスキー。ブライアン・ウッズとスコット・ベックの書いた原案の映画化をクラシンスキーが打診され、最初はホラーはやらないと断るつもりだったが、その原案を読み、やることを決めたという。主演は、エミリー・ブラント、ジョン・クラシンスキ、ミリセント シモンズ、ノア ジュープ(どっかでみた顔だと思ったら、「ワンダー 君はいい子」でワンダー君と最初に仲良くなるあの子)。 エミリーとジョンは実生活でも夫婦であり、映画でも夫婦を演じている。
こんな心臓に悪い映画があったものか!という映画。終始、ハラハラさせられる、不条理な状況で家族がサバイバルするホラー。音を立てると理不尽に凶暴な聴覚過敏なモンスターに殺されてしまう。音をたてないようにして、家族で力を合わせ生き抜かなければいけないが…
まず、家族と、音をたててはいけないという状況の組み合わせがよい。なぜって、家族は音を立てるものだから。子どもはなにかにつけて音をたてやすい。子ども自身が自分をコントロールできないし。子どもを静かにさせる、音を立てさせない、という親御さんの努力、心労を推し量ると涙が出てくる。公共の場所で子どもが騒いで、気難しいおっさんにどやされるというレベルの話ではなく、少しでもうるさくすると、凶悪な怪物に殺されるというのだから。理不尽、不条理、ここに極まれり。また、家族が主体に置かれていることで、極限状況での夫婦愛、親子愛のジーンとくるドラマもうまく盛り込まれている。
そして、映画の中盤でエミリー・ブラント演じる妻が抱えるある問題が明らかにされるのだが、思わず「なるほどそうきたか!」と唸らされた。音を立ててはいけない状況においてはある意味で爆弾投下ともいえる問題。非常に巧みで効果的な設定。
終始ハラハラさせる、うまい間の取り方も素晴らしかった。あぁ!・・・音を出してはいけないのに、・・・音、・・・出しちゃったー! の展開とテンポに、ガキの使いの「笑ってはいけない」シリーズを思い出した。笑っちゃいけないのに、笑ってしまう。音出しちゃいけないのに、音出しちゃう。ガキ使ではケツバットだが、こっちは怪物による殺戮なわけで、スリルは物凄い。静と動のコントラストの妙技。
自然界の音の法則を踏まえての、「音を出しても大丈夫な状況」の描写も、なるほど!と膝を打った。モンスターは、大きな音のほうにおびき寄せられる、という特性も含め、絶望的に勝ち目のなさそうなモンスターと対峙していくロジックがちゃんとあり、観ている側としては画面の中の家族がまるでゲームを攻略しているような楽しさもあった。 あまり詳しくは書けないが、もっとロジックで最後まで攻略してくたらなぁ、とは思った。
製作のクレジットにマイケル・ベイがいる。
ちょっと気になった。モンスターのCG造形に関係してるのかな。
ジョン クラシンスキーはアメリカのTVドラマThe office (2005-2013)でのジム役がアタリ役。私もそれでこの人知りました。 しかし、映画を撮っていたとは知らんかった。
これまでの監督作はBrief Interviews with Hideous Men(2009) 、The Hollars/最高の家族の見つけ方(2016)ときて、今作が3作目。The Hollarsは日本では劇場公開がなくDVDリリースのみ。 まさに、このクワイエットプレイスが出世作となった。
クワイエットプレイスは、アメリカで大ヒット。かのスティーブンキングがこの作品に対して、”A QUIET PLACE is an extraordinary piece of work. Terrific acting, but the main thing is the SILENCE, and how it makes the camera’s eye open wide in a way few movies manage” (拙訳: クワイエットプレイスは大傑作だ。素晴らしい演技もある、しかしメインとなるのは沈黙。沈黙によってカメラが捉える世界がワイドに開かれている。ほんのわずかな映画にしか成し得ないことだ。 ) と2018年4月6日にツイートしている。2018年10月現在、インターネットムービーデータベース(imdb)の評価も7.7と高い。 ライト層からコアな映画通まで、広く様々な人から賞賛を受けている作品と言える。
脚本のブライアンウッズとスコットベックは、どちらも1984年生まれ。 若き才能。クワイエットプレイスの脚本は当初、ホラー映画クローバーフィールドのシリーズのひとつとして世に出される流れで動いていたという。しかし、いざ脚本が仕上がってみると、これはまったく別物の1本の映画として世に出されるべきだという話になったとのことだ。細部の設定までよく練られた今作の脚本からは、このコンビによる次なる脚本もおおいに期待させる。
クワイエットプレイス、カップルのデート映画としてはもちろんのこと、ハラハラする気持ちをわすれた不感症の独り者にもうってつけの作品。
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