なめてた恋人の実家が実はトンデモない大金持ちだった!シンガポールを舞台に繰り広げられる、マジやべぇ金持ちたちの軽薄で贅沢な享楽の有り様。アメリカ育ちのアジア系レイチェルの、勝負の一手に涙! アジア人がメインキャストの映画「クレイジーリッチ」はなぜアメリカでヒットしたのか

金持ちになりたい、って思うけど、たいていの金持ちって生まれた時からもう金持ちだから、階級のようにどうにもならなかったりするね!

ガリガリくんリッチどころじゃない、クレイジーリッチな映画が公開中だということで、貧乏暇なし、いそいそとボロ布羽織って観にいってきた。

クレイジーリッチ/ Crazy Rich Asians (2018)。監督はジョン M チュウ。Kevin Kwanの原作をPeter ChiarelliとAdele Limが脚本。コンスタンス・ウー、ヘンリー・ゴールディン、ミシェル・ヨー、オウクワ・フィーナなどが出演。アジア系アメリカ人のコンスタンス・ウーとマレーシア系イギリス人のヘンリー・ゴールディングのアジア系カップルが主演であり、ハリウッドでの英語音声の映画でのアジア系の主演はThe Joy Luck Club(1993)以来とのこと。

これが、アメリカで公開初週から大ヒットを続けている。予算3千万ドルに対して公開初週のアメリカでの収入$26,515,140、その週のトップとなる。ロマンスコメディのジャンルでは近年稀に見る快挙の数字だという。8/15の公開から、10/7 時点で$169,241,568の収入。imdb のレーティングは7.5。続編の製作ももう決定しているとか。

なぜにこの映画がこのような大ヒットとなっているのか。どんな映画なのか。

若くしてニューヨーク大学で教授として働くコンスタンス・ウー扮するレイチェルと、その恋人のヘンリー・ゴールディン扮するニック。都会暮らしのナイスカップル。ニックが、大学の春休みにシンガポール行こうと誘う、ちょうど友達の結婚式あるからと。いいねいいねとなるレイチェルだったが、空港で案内されたのがファーストクラスであることに、あれ?となる。私たち、エコノミークラスに乗る身分では? ニックは汚い体育館でバスケをしてるのよ!

なんと、彼はシンガポールの大資産家の家庭に生まれたクレイジーリッチの中でも一目置かれるクレイジークレイジーリッチだった。映画秘宝のギンテイ小林氏の提唱した概念「なめてた相手が実は殺人マシーンだった」に当てはめれば「なめてた恋人の実家がとんでもない大金持ちだった」展開! レイチェルは、彼の親戚家族たちのクレイジーリッチな世界に足を踏み入れることとなるが…

ニックはレイチェルが自分の金とか血筋を全く気にしないからこそレイチェルに惹かれていたわけだが、「ニック=MONEY」と結びつけてしか思考のできないニックの地元のクレイジーリッチ女性たちは、ニックの女というポジションにいるレイチェルに対して嫉妬と悪意をこれでもかとぶつける! レイチェルが着ている服装に対して「あれ?それってGAP風?」みたいな嫌味は軽いもので、ゴッドファーザーオマージュな極道嫌がらせもぶちかます。とにかく常識が通じないし、血筋、資産で相手を値踏みする性格の悪さ。結婚式の前の「バチェラーパーティ」でのバカ騒ぎ描写が秀逸で、とことん品がなくて幼稚。ただ派手なだけ。金だけあって無教養、無神経。金持ちにはなりたいけど、こんな金持ちにはなりたくない!

また、レイチェルはアメリカ生まれの中国系 American Born Chinese(ABCと言われる)で、かたや恋人のニックとその家族たちはアジア生まれのアジア育ち。見た目は同じアジア系でも、育ってきた文化、抱く価値観は違っている。レイチェルに対するシンガポールのクレイジーリッチたちの反感は、ニックを捕まえた金漁り女!ということに加え、レイチェルが「アメリカ人」である事が関係している。

特に、ミシェル・ヨー演じるニックの母親が顕著にレイチェルと対立。そして、この映画の肝はこのレイチェルとニックの母親の対立の構図にある。情熱を持って仕事をして、自己実現して幸せを追求するレイチェルの「アメリカ」的な立身出世のスピリットそれ自体を「自分本位」であり、中国の家族を大事にする思想と相容れないものだと切り捨てるニックの母。

水と油のように異なる価値観を持つレイチェルとニックの母だが、ニックの母もまた、嫁にくる前はレイチェルと同じような立場にあったことが示される。自分を殺して家族を築いてきたからこそ「アメリカ人女なんかにうちの息子の嫁はつとまらん」というわけだ。あまり多くは映画の中で語られないが、このニックの母の人生を想像すると、味わい深い。

アメリカはもともと、故郷をすてた移民たちによって築かれた国だ。アメリカとは別の国や文化にルーツを持つ多くのアメリカ人にとって、アジア系アメリカ人と英語を話すアジア人との文化的軋轢、そしてその先にあるものを描いたストーリーは、ビリビリと琴線に触れるものなのではないか。こういった要素が、アジア系キャストのリッチな暮らしを描いたラブコメ、というものから一線を画した作品にクレイジーリッチを仕立てあげており、根強いヒットに繋がっているのではないだろうか。

ラストのレイチェルの立ち回りからのあの展開は、映画のテーマへの回答でもあり、見事!としか言いようのない仕上がりになっている。理不尽な職場の上司や同僚への立ち向かい方にも応用できそう。レイチェルがゲーム理論の経済学者というのもちゃんと回収されている。

劇伴として流れるアメリカでヒットしたスタンダードナンバーの中国語バージョンも聴いてて耳に心地よい。アメリカのヒット曲を中国語バージョンで流すこと、それは「アジア系アメリカ人として生きることの感覚を感じてもらうために意図的に行ったことで、そのようなカルチャーのブレンドは、この映画の核になるとことだ」と監督も言っており、それぞれの曲の意味を考えても味わい深い。
https://www.bustle.com/p/all-the-songs-in-crazy-rich-asians-that-youll-want-to-listen-to-over-over-again-10239631
劇中の曲をすべてまとめている記事。 マテリアルガールがすごく印象的だった。

そして、Oceans 8でもひときわ目立っていた、ラッパーでもあるオウクワフィーナの魅力たるや。トリッキーな動きとかすれ声でのパンチの効いたセリフ。パンクでキュートな佇まいに、気づけば画面でオウクワフィーナを追ってしまっている。エンディング曲のMoney(That’s What I Want)も最高!

というわけで、アメリカを席巻しているアジアのラブコメ、クレイジーリッチ。辛気くさい日本の不景気をぶっ飛ばすアッパーな映画。シンガポールの屋台が美味しそう! テンションあがる、いい映画です。

 

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