夜の8時から朝の6時までの濃密な時間。2018年秋、新文芸坐の「仁義なき戦いオールナイト」に行ってきた。仁義なき戦い、魅力がすごいよ!

9/29土曜。その日は朝からなんだか心がザワザワしていた。台風も関東に迫っていた。

夕方、2時間ほど仮眠をとり、いそいそと起きて、松屋で腹ごしらえして、池袋へと向かった。


仁義なき戦い オールナイト上映に参加するためだ!


夜の8時から翌日の朝6時までの仁義なきオールナイトイベント。

あらかじめ、杉作J太郎氏による「仁義なき戦い 浪漫アルバム」で基本的なところを予習していた。この本がまぁおもしろいのなんの!心構えはバッチリだ。

混雑する館内。
今回のオールナイトは座席指定。 D列の真ん中のあたりの席だ。

トイレを済ませ、オールナイトドリンクバー(350円)を購入し、準備オッケー。

夜の8時20分、最初の作品がはじまった。


仁義なき戦い(1973)
監督:深作欣二
脚本: 笠松和夫
出演:菅原文太、松方弘樹、梅宮辰夫、田中邦衛、金子信雄、川地民夫、渡瀬恒彦ら

仁義なき戦い、一作目。
冒頭からドスの効いた音楽で一気に引き込まれる

このドスの効いた音楽を担当したのは 津島 利章 氏。主旋律にエレクトリックベース音を採用した、ベースを二本重ねた極悪な音。「仁義なき闘いロマンアルバム」の中で裏話が語られている。

戦後の闇市の復興から、朝鮮戦争の時代を経て、大きくなっていった山守組。大きくなっていく中で、土井組との抗争、そして山守組のなかでの争いも熾烈さを増していく。菅原文太演じる広能、松方弘樹演じるサカイのてっちゃん。てっちゃんが感情的に動く中で秩序をなんとか維持しようとする広能であったが、狡猾な小悪党であり組長の山守、そして田中邦衛演じる槇原ら、汚い奴らに翻弄されていく…。

実際に撮影の現場には本物のヤクザの方々が多数、見に来られていたようだ。だからこそのリアルな説得力が画面の端々から伝わってくる。

ラスト、てっちゃんの葬儀に現れた広能。親分どもの花とか立て札を銃でぶちやぶる!山守に 「お前、腹くくっとんのか!」と一喝されるも「山守さん、弾はまだ残ってますけ…」と静かに凄んで答える。切れ味バツグンの名シーン!

見所満載の、異様なテンションに満ちた一作目。梅宮辰夫が学生服を身に纏った「てんぷら」姿にも刮目したい!

映画が終わり、休憩時間15分。

SEVENTEENアイスクリームの自販機でアイスを買ってペロペロ食べて糖分補給。

そして、夜の10時15分、二本目へと雪崩れ込んだ。


仁義なき戦い 広島死闘編(1973)
監督:深作欣二
脚本:笠原和夫
出演: 北大路欣也、千葉真一、梶芽衣子、成田三樹夫、菅原文太、室田日出男、金子信雄、川谷拓三

さらに激しさを増して行く仁義なきバトル。

この2作目では、何と言っても千葉真一演じる大友勝利、そして北大路欣也演じる山中せいじ、それぞれ違うベクトルで狂気を体現する二人が巻き起こして行く死闘が凄まじい。

ギラギラした目つきでマグナムをぶっぱなす殺人マシーンの北大路欣也。愛する梶芽衣子のために血をたぎらせ殺しに殺しを重ねる。

出てきた瞬間から様子がおかしい千葉真一演じる大友勝利。股間をさわりながら男らしいふるまいを見せつける。木刀振り回し手がつけられない。「オメコの汁で飯を食う」という衝撃的キラーフレーズを含む、伝説的名セリフを説得力持って届ける千葉真一の狂気の体現に震える。

山中せいじは「広島ヤクザの典型」として描かれる。それは、鉄砲玉として使われた挙句、散り、その墓に誰も訪れるものもいない「大人に使われて犠牲になった若者」。それは監督の深作欣二がこのシリーズでテーマとして描いたものでもある。

終盤、16ミリフィルムで撮影された、山中が雨の中逃げる映像は、荒々しく生々しくすごい迫力だ。

当初は、北大路欣也と千葉真一で演じる役が逆だったという。 クランクイン直前で「代える」ということになり、ひと騒動だったそうだ。映画ができあがってみれば、それぞれがハマリ役すぎて、最初逆だったなんて思いも及ばない。

千葉真一にとっては初の悪役を演じることとなり、かなり思い切った、役者としての転機となった作品。

2本目が終わり、休憩時間15分。

館内で売っていたカレーパンをむしゃむしゃ食べる。

そして、深夜0時10分、3本目へ突入。


仁義なき戦い 代理戦争(1973)
監督:深作欣二
脚本:笠松和夫
出演: 菅原文太、小林旭、田中邦衛、遠藤たつお、金子信雄、成田三樹夫、山城慎吾、池玲子、加藤武、室田日出男、川谷拓三

村岡組、山守組らの広島ヤクザに加えて神戸の明石組、新生会も巻き込んで、事態はどんどんでかくなっていく。それぞれの腹のさぐりあい、騙し合い。複雑な組同士の入り乱れで人物関係整理するのが大変!

前作で大友組組員として死んだ室田日出男が打本組の早川として輪廻転生して登場していたり、一作目で学生服のまま壮絶な死を遂げ梅宮辰夫が眉毛を剃り落として明石組の組員として出てきたり、生き返りも多数!一作目から連続してみているとヤバさひとしお! 松方弘樹も病弱なヤクザとしてカムバック。

広能は山守組破門になり、成田三樹夫もついでに組を去った。山守組と新生会、そして広能と明石組。その間で揺れる打本とその子分の早川。いよいよ抗争へ、事態は進展していく。

川谷拓三、仁義なき戦い三作目にして三度目の登場。女にテレビを買ってくれとせがまれスクラップ横長ししたのがバレて、広能にボコボコにされる。けじめとして手首切り落とすという離れわざ!

当初は川谷拓三が演じた西条は荒木一郎が配役されていたが「広島はこわいから」という理由で降板。川谷拓三の大抜擢となったという。

木刀で半殺しにされる渡瀬恒彦が目に焼き付けられる。

オールナイトで観ていると、この辺で疲れが。

30分休憩。外に出て、自販機でリアルゴールドを買って飲んだ。外気はもう秋。オールナイトの途中の休憩のこの感じすごくいい。

館内に戻り、深夜2時25分、4作目へと雪崩れ込んだ。


仁義なき戦い 頂上決戦(1974)
監督:深作欣二
脚本:笠松和夫
出演: 菅原文太、小林旭、山城新伍、金子信雄、田中邦衛、小池朝雄、

前作、代理戦争とセットで完結するストーリー。 神戸の明石組と広能と打本 陣営 vs 神戸の神和会と山守と早川陣営。神戸と広島を巻き込んだ、壮大な戦争が巻き起こる。

若い奴らはどんどん犠牲になり、幹部たちもただ疲弊。優柔不断で責任とらない山守や打本ら親玉達はのうのうと生き延びる。白昼の暴力事件が相次ぎ、市民社会からの反発で警察が動き幹部連中が逮捕されるも、偉いやつらの罪は軽いという不条理。

今作に限らず仁義なき戦いシリーズの路上、駅の構内での撮影は事前の許可なくゲリラ的に行われ、それを観ていた一般の人が本当に暴力事件が起きたと勘違いして通報したこともあったのだとか。なのでスタッフが撮影後に「いまのは映画の撮影でした」と書いた紙を周囲に見せて対処していたのだとか。居合わせた人にとってはショッキングなドッキリ番組のような体験だったろう。

「戦争だ!」と血の気の多い若いヤクザたちがいきりたつが、トップが及び腰だったりして、なんだか白けた終止符に。戦後、朝鮮戦争経を経て、60年代。暴力の抗争は市民社会の秩序に吸収されていった。

美学や正義などない、仁義のない戦いとはまさに、こういったもの。深作欣二、脚本の笠原和夫、両氏にとっては第二次世界大戦での日本を重ねる部分もあったろう。

実質的なシリーズの終わりのような雰囲気。

疲れや眠気は感じず、なんだか目がギラギラ冴える。

朝方、午前4時20分、最後の作品へと突入。


仁義なき戦い 完結編 (1974)
監督 深作欣二
脚本 高田 宏治
出演 菅原文太、北大路欣也、松方弘樹、小林旭、金子信雄、田中邦衛、宍戸錠、山城新伍、

作品内の時間軸では、第一作目から20年以上経過。それぞれが年をとっている。枯れた哀愁漂わせる菅原文太や小林旭。

頂上決戦の後、いままでのヤクザからは脱却しようと小林旭が中心となり天政会をまとめた。ロジカルで考えの新しい若手、北大路欣也に跡目を継がせたい小林旭であったが、しかし、小林旭の跡目をめぐり、宍戸錠が演じる荒くれ大友勝利が暗躍したり、またまた蘇った松方弘樹らによって掻き回されにっちもさっちもいかなくなる。

前作で一応話はまとまっており、後日談のような五作目。

松方弘樹が目の下にクマみたいなメイクして復活。北大路欣也も、天政会の若手ホープとして復活。大友勝利として、千葉真一からすげ変わって宍戸錠が登場。

一作目からしぶとく生き残った田中邦衛も、お祭りの縁日でりんご飴かなんか買ってるときに蜂の巣にされる。

菅原文太演じる広能は頂上決戦のあと7年の刑期を終え出所。しかし、獄中でも思うところあったり、引退へと気持ちを向けていく。

同じく引退する小林旭が、しがらみを忘れ「酒でも飲もう」と誘うが、広能は「それはできん。死んだもんに悪いからのう」と答える。シビれるシーン。

死んでしまった若いやつの顔がだれかもよくわからなくなったと気づき、ついに広能は引退を決意する。

メインどころが引退していっても、所詮は覇権の交代でしかなく、暴力は続く….。

五作連続でみると、予想以上の時間経過の激しさ、同じ役者の持ち回りの役の多さに脳の処理が大変なことになる。

20数年の濃厚な仁義なき世界。2年ほどの間で5作品、全て公開された。そのパワーとスピードに驚愕。

全て見終えて、仁義なき作品たちの、そのパワーにひれ伏した。

仁義なき戦いの魅力ってなにか。

それは以下の3点にまとめられる。

1. キャラの立った人物たちの群像劇
菅原文太が主演であるが、あくまで狂言回し。アクの強い役者たちがアクの強い人物に扮して暴れまわる。あの役者のあのセリフが最高なんだ!あのシーンがシビれる!と語りたくなること必至。それは、アイドルグループのファンになり、推しメンがそれぞれできる楽しみとも似ている。

当時のスターキャストたちが勢ぞろい出演し、ひとりの俳優がひとつの役で死んでも、また別の役で蘇る。それを追うのも楽しい。何作目の川谷拓三のやられ方は最高だよな!とか、松方弘樹だったら何作目のが好きか?とか夜通し話がしたいよ。

2 . 生々しく、パワフルな映像
高倉健、鶴田浩二らが主演作品での、いままでのヤクザ映画にあったケレン、任侠美学。

仁義なき戦いシリーズではそういったものは意図的に排除されている。

殺陣も徹底して泥臭くしている。いきがっているヤクザも、人を殺すシーンでは、よれよれ、つっかかって転ぶ。脅されれば、貧弱に怯える。そこに立ち上がるリアルヤクザの恐ろしさ。

撮影現場では本物のヤクザが来ており、撮影の合間ではヤクザと酒を飲んで役者たちはリアルやくざの立ち振る舞いを体得したという。

ベテランのキャメラマン吉田貞治 によるズームを駆使した臨場感あふれる映像とあいまって、そのドキュメンタリックでパワフルな映像は唯一無二の仕上がり!

優れたドキュメンタリー映画のように生々しく心に迫り、優れたアクション映画のように心を揺さぶり興奮の高みへと連れていく。こんな映画、他にあるのか!!

3. 社会性
ずるくて古い考えの大人に、若者がいいように使われ、犠牲になっていく。

それが通底したテーマとして仁義なき戦いを貫いている。

それは監督の深作欣二が戦後の焼け野原で目にしてきたもの、脚本の笠原和夫が特攻隊の予科練生として過ごし感じたものを反映している。各作品で毎回、映画の最後に映し出される原爆ドーム。それは、抗争で犠牲になった若いヤクザと、戦争で犠牲になった若者を重ねている。

そのような不条理は、2018年であっても、日大アメフト、タックル命令事件などで表面化したように、日本の組織に今なお残る体質だ。

仁義なき戦いは、観るものに時代を越えて普遍的な問題を提示する。まるで古典文学のように。クソみたいな自己啓発本やビジネス書を読む時間があったら、仁義なき戦いをオールナイトで観ろ!

仁義なき戦いを観たことがあるかないかで、人生の豊かさは変わってくるだろう。
今回の仁義なきオールナイト、行って本当によかった。

仁義なき戦い観て、朝帰り。きっと忘れない、2018年の秋の出来事。

 

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