ブルースウィリス、ディーンノリス、そしてパイル二等兵。ベテラン中年俳優の濃厚で味わい深い佇まいが見応えあり、怒った外科医の快楽殺人じみたリベンジ行為に戦慄!イーライロスが初めて監督したアクション映画であり狼よさらばのリメイク、デスウィッシュを観てきた。

ハロウィンだなんだと沸き立つ週末。

渋く味わい深い中年のスキンヘッド、ブルースウィリスが主演の新作アクション映画が劇場で公開している。しかも、監督はあのイーライロス。

あのチャールズブロンソンの狼よさらばのリメイクというではないか。

これは観るっきゃないと、へこへこと劇場へ足を運んだ。

デスウィッシュ (2018) 。ブライアンガーフィールド原作で ウェンデル・メイズ脚本のチャールズ・ブロンソン主演映画、狼よさらば(1974)のリメイク。プロジェクトは当初、ジョー・カーナハン監督・脚本で進んでいたが頓挫し、イーライ・ロスが引き継ぐことに。ブルース・ウィリス、ヴィンセント・ドノフリオ(フルメタルジャケットのパイル二等兵)、ディーン・ノリス(Breaking badのハンク)、カミラ・モローンら味のある役者たちが出演。イーライ・ロス監督の作品で、ホラーではないものは初だという。

犯罪あふれる街、シカゴ。腕のいい外科医、ブルースウィリス扮するポールカージー。妻と出来のよく美しい娘とに囲まれ幸せな日々。ビーチボーイズのDon’t worry babyなんか流れたりする幸福描写。しかし、ある日強盗に入られ、妻は殺され、娘も重傷! 失意にくれるポールであったが、犯罪にあふれるシカゴの街、警察は頼りなく、妻の葬式の帰りに、警察はたよりにならねえ!と自分の土地を自分で守る親戚の姿をみて、自ら裁きを下す道へと突き進んでいく…。

病院でラッキーにも拳銃、GLOCK17(オーストリアのグロック社製の拳銃。1985年頃から米国で流通。プラスチックが多用され軽量)をゲットしたポールカージーは、ネット動画で銃の使い方を学び、街のダニどもに制裁を下す術を独学で着々と身につける。

そのネット動画のタイトルは「FULL METAL TACTICS」。 カージーの弟役として本作に出演しているヴィンセント・ドノフリオがパイル二等兵として狂気を体現している永遠の名作「FULL METAL JACKET」になぞらえて、イーライロスが名付けたというわけだ。


フルメタルジャケットより ドーナツ隠してたことで激しく叱られるパイル二等兵。

GLOCK17をジーンズに突っ込み、病院で廃棄されたボロパーカーを来てフードをかぶり、街へ自警団活動に繰り出すカージー。悪党がいれば警察など頼らず、裁きをくだす! そんな自警団活動の現場が動画で撮影されネットにあげられ、フードかぶった死神!とネットで話題になる。SNSで拡散し、賛否両論がまきおこり、模倣する人も出てくるといった始末。ネットの活用され具合はオリジナル版では当然なかった部分だ。

また、オリジナルでは建築士だったが、今回のリメイクでは、ポールカージーは外科医。外科医ってのは血や人体に慣れているためか、殺しは素人のはずが、度胸あり、手際よく、そして必要以上に残酷! 特に、車整備場での拷問殺人シーンは完全に快楽殺人じみた手口で、映画の主人公、正義の側の所業とは思えぬ仕上がりに。外科医を怒らせてはいけないということか。それと、ポールカージーは左利き(ブルースウィリス自体も左利き)であり、なめてた左利きが殺人マシーンでした、ということでもある。実際、左利きというのは世の中でなめられがちである。外科医と左利きは怒らせてはいけない。

そして今作では、ブルース・ウィリス、ディーン・ノリスといった渋く味わい深い中年スキンヘッズが画面狭しと活躍しているのも特徴だ。イーライ・ロスは味わい深い顔のスキンヘッドが好きなのかもしれない。実際に、イーライロスはブレイキングバッドを観てディーンノリスのファンであることを公言しており、自分の次買う犬には、ノリスのブレイキングバッドでの役名のハンクを名付けるとも言っている。

もともと、ポールカージーの役は他にリーアムニーソン、ラッセルクロウ、マットデイモン、ベネチオデルトロ、ブラッドピットらが候補にあがっており、イーライロスの前に監督をするはずだったジョーカーナハンはリーアムニーソンを推していたという。しかし、製作側がブルースウィリスを選んだため、ジョーカーナハンは、それだけの理由ではないだろうが、プロジェクトを降りた。ジョーカーナハンはスキンヘッドの中年があまり好きではないのかもしれない。

ブルースウィリスといえばスキンヘッドであるイメージは今では当たり前になってしまっている。しかし、ちょうどデスウィッシュを劇場で観た翌日にシックスセンス(1999)を国立フィルムアーカイブでフィルム上映で観た時にハッと気づいたのだが、90年代末の時点では全然スキンヘッドではなかったのだ。そういえば、ダイハードとかの時も全然髪あるもんな。ブルースウィリスっていつからあんなに当たり前のようにスキンヘッドになったんだろう? と思い調べていたら、ブルースウィリスの頭髪の変遷についてまとめている記事を見つけた。https://theidleman.com/manual/health/bruce-willis-hair-loss/ 味わい深い記事である。

また、アメリカってこんなに簡単に銃器が購入できてしまうのかい、という描写も。大きな胸で金髪の愛想のいいねえちゃん(カービー・ブリス・ブラントン。イーライロスのグリーンインフェルノに出ていた!)が、書類もチャチャッと書いて、審査とかあってないようなもんだからみんな通るよ! とカジュアルに銃器をセールス。 そりゃあこんだけ犯罪も蔓延するわけでっしゃ。

そこでポールカージーが購入した、BDR-15-3G SKELETONIZED PISTOLが、クライマックスにフルオートで火を噴く。どこで噴くかは映画を観てのお楽しみ。

ブルースウィリスを筆頭に味わい深く見栄えする演者たちが素晴らしいかった。パイル二等兵で知られるヴィンセント・ドノフリオの不穏な佇まいは、最後までこいつはもしや….と思わせるサスペンスがあったし、ポールカージーの娘役のカミラモローンも可愛くて美しくて眼福だった。

AC/DCのBACK IN BLACKがドカンと炸裂して締めくくられる、イーライロスとブルースウィリスによるデスウィッシュ。続編もありそうだ。期待して待つ。

 

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映画、音楽、本のことを中心に、役に立つかどうか度外視して書きたいこと書こうと思っています。サブカルなイベントもよく行くので、そのレポートみたいなことも書くかもしれません。