春風亭一之輔ゲスト回前編。落語を観に行きたくなること必至。きっかけは、ひとりになりたかったから。人気落語家が語る落語の魅力、寄席の魅力。篠田麻里子の冠ラジオであり宇垣美里アナが助手を務めるラジオ「グッド・ライフ・ラボ」第7 回目の放送を聴いた(11月13日)

「グッド・ライフ・ラボ」は毎週火曜21:30-22:00、TBSラジオで放送されている番組。2018年秋の改変での新番組である。

篠田麻里子が所長、助手の宇垣美里アナウンサー、所員の占い芸人がアポロン山崎といった体裁で、ゲストを呼んでその人のライフスタイルについて根掘り葉掘り聞いていく番組。

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「ここはよりよい暮らしを追求するgood life labo。人望熱き所長の麻里子。有能な助手の宇垣。占い上手の所員アポロンが日々研究に取り組んでいます。豊かな未来へ繋がるgood lifeを極めるために、今日も探求は続くのです」と、いい声のナレーターが番組の趣旨を説明。

宇垣「所長、そろそろ、ボージョレ・ヌーボーの季節ですねぇ」
アポ「あ、ボジョレ乳房ならぬ、ボジョレニューボー!なんつって」
篠田「恥ずかしがりながら言うのやめたほうがいいよ。」
アポ「いやいや、これ言わされてんすよ
宇垣「本気でやれ、言うなら!
アポ「いや、僕かなり頑張ったと思いますよ!
篠田「え、今年のボージョレーヌーボーっていつだっけ?
アポ「全然無視!
宇垣「11月の第3木曜日ですから、明後日ですよ
篠田「楽しみだねえ」

と冒頭の小芝居をはさみ、

今回も、篠田麻里子、宇垣美里、アポロン山崎の布陣でお届け。

今週のゲストは、落語家の春風亭一之輔さん。

春風亭一之輔さん登場。

「TBSのおかげで水道代払えてます」

篠田「わたし実は始めましてじゃないんですよ。お会いしたのは始めてなんですけど、一方的に見てました。
一之輔「どこで、なにを」
篠田「わたし、落語好きで。休日は落語を見に行くんですけど」
一之輔「寄席とか?」
篠田「鈴本演芸場と、あと、末廣亭に行くんですけど」
一之輔「まじですか。なんか言ってくれりゃあ」
篠田「一方的に、ステージの上を見てました!」
一之輔「あ、そうですか、それはありがとうございます」
篠田「昼の部よく行くんですけど、お昼お弁当を買って、あそこでお弁当食べながら」
一之輔「けっこうじゃあ浮くでしょ?」
篠田「全然、馴染んでますよ」
一之輔「昼は年配の方多いですから」
篠田「あとでも、最近すごい若い方も増えてるじゃないですか」
一之輔「増えましたねぇ」
篠田「だから同い年の方もいるし、わたしよりも若い方もすごく多くて。大好きです。」
一之輔「ありがとうございます。篠田さんのおかげで、僕家賃が払えてます」
篠田「よくいいますよ!」
一之輔「借家なもんで! ありがとうございます」
宇垣「一之輔さんはなんといっても、TBSラジオファミリーですから。毎月第3水曜日、たまむすび内で、午後3時からレギュラーでご出演されているということで。もう、慣れてらっしゃる」
一之輔「TBSはほんと、お世話なってます。TBSのおかげで水道代払えてます」
アポ「そんなのばっかり!」
一之輔「食費は、主に落語から。(収入の先を)バラバラにしてね。」

ここで、宇垣さんの声でプロフィールが読み上げられる。

「春風亭一之輔さんは1978年生まれ、千葉県のご出身です。日本大学芸術学部で落語研究会に入り、大学を卒業した2001年、春風亭一丁に入門。2012年、21人抜きという驚きの速さで真打ち昇進。現在はチケットが取れない、人気ナンバーワンの呼び声も高い噺家さんです」

そして、以下のようにトークが繰り広げられた。

「AKBでいうと、神セブンの中に入ってる」

一之輔「いやいや、呼び声ですか。呼び声ってなんですかね。」
篠田「人気落語家ランキングで絶対トップ5には入っている一之輔さんですから。AKBでいうと、神セブンの中に入ってるという。」
一之輔「嬉しい限りです」
篠田「チケット取れないですからね」
一之輔「チケットどうなんすかね、取れないんすかね。自分で自分のチケット取ろうとしたことないからわからないですけど。最近、チケットってとります? なんかの。自分で。」
篠田「コンサートのはとりますね。安室奈美恵さんの取ろうとして取れなかったんですけど。」
宇垣「取れなかったんですね」
一之輔「なんか、裏からとかそういうのは」
篠田「みんなの思いがあるから、ちゃんと自分でとらなきゃと思って取ろうとしたんですけど、まぁ落ちたので。それもまた運命かなと。」

「人のいないところが好きなんで、探したら、落語クラブと俳句クラブだったんで。俳句はやだなぁと思って、落語にしたんですよ。」

篠田「一之輔さんって、そもそも、落語をやろうと思ったきっかけってなんなんですか?
一之輔「最初にやったのは、小学校の時なんですよ」
篠田「え、早い!」
一之輔「小学校のクラブ活動で、落語クラブというのがあったんですよ。水曜日の6限だけ潰して、高学年だけクラブ活動みたいのありませんでした?全員がやるようなやつ。それで、サッカーとかバスケットは人気があって、ワッとかたまって。でも僕ひとのいないところが好きなんで、探したら、落語クラブと俳句クラブだったんで。俳句はやだなぁと思って、落語にしたんですよ。」
篠田「そもそも、落語って存在は知ってて?」
一之輔「いや、知らないです。笑点だけです。」
篠田「なるほど」
一之輔「ああいう、じいさんがやるやつかなと思って。なるべく人がいないとこに行きたい性分なんで。それで行ったら先生にプリント渡されて、落語の。これ覚えてやんなさいって。ただそれを暗唱して、ワッというだけの部活動。それが最初のきっかけです。」
篠田「小学校の時からってすごいですね。」
一之輔「そっから間があって、高校の時、運動部に入ったんですけど、ラグビー部。でも嫌になってやめちゃって。それで高2の時に、土曜日の午後が暇になっちゃって。それで、浅草行ったら、昇り旗があって、浅草演芸ホールってのがあって。なんか、安いんですよ。当時、学生だと1200円くらいだったかな。それで、入れ替えがなくて、11時半から夜の9時までずっといられるという。」
篠田「いまより長いですね。いまは、5時まですよね」
一之輔「入れ替え制だとそうなるんですけど、浅草演芸ホールは入れ替え制ではないんですよね。ずーっとそのままいられる。」
アポ「昔の映画館みたいですね。ずーっとそのままいられる。」
一之輔「そう、だから、お小遣いで、ずっといられて、ちょっとひとりきりになれる場所みたいな。」

「落語家から紐が一本一本お客さんに繋がってる感じですね」

篠田「そもそも、一人が好きという」
一之輔「(しみじみと)ひとりはいいよ〜 落語って、大勢で見てると思いきや、けっこう一対一なんですよ。お客さんと演者。わりと集中して見られる」
宇垣「一対一がいっぱいあるって感じですか」
一之輔「そう。だから、落語家から紐が一本一本お客さんに繋がってる感じですね。演者の立場から見ると、お客さんに一本一本ラインが繋がって、笑ってください、みたいな。鵜飼と鵜みたいな。そんな感じ。」
篠田「やっぱり、ひとりが楽しめるって素敵ですよね。」
アポ「ひとりが好きってことですけど、小学校のその時、舞台に上がってやったんですか?」
一之輔「やりました。1500人の前で。六年生の時に、六年生を送る会みたいので。どうだったか、ウケたのか、覚えてないですけど」
宇垣「ひとりが好きな人って、人前に立つのも苦手だったりするじゃないですか。」
一之輔「その時は、そうでもなかったですね。やれよ、って言われて背中押されて、ほかにやる人いなかったから、そうすかね、ってやりましたけど。いまだにそんな感じで生きてますけどね。」
篠田「いい意味で、周りの環境が良かったんじゃないですか。」
一之輔「どうなんですかね。まぁ真打ちになったのも、周りがお膳立てしてくれてなったようなとこもあるんで。自分が意識してってのはあまりないですね。」

「ぼくまず師匠に言われたのが、褒められたら気をつけろって」

篠田「私、一之輔さんの、落語が始まる前の枕って言ってフリートークみたいのがあるんですけど。それがすごい好きで。」
一之輔「めちゃめちゃダラダラ喋っている」
篠田「そう、ダラダラ喋ってるんです! ダラダラ喋ってるんですけど、それが、いい意味で毒があって。すごく面白いんですよ。 毒って、人を傷つけたりとかもできないし、毒で笑わせるってとても高度なテクニックだと思うんですよ。それが、お客さん目線だから、面白い。」
一之輔「僕も、客だったからかもしれない。寄席通ってたから、お客さんの気持ちがわかる。だから、真昼間のみんな働いてる時間に寄席を聞いてる若干の後ろめたさとか、なんかこう、背徳感があるんですよ。寄席って。それの代弁みたいなことに、お客さんも共感してくれているのかも。毒も、共感がないとあんまり笑えないんですよ。」
篠田「そうなんですよね。だから、毒っていい方でいいのかどうかわからないんだけど、ほんと、共感できる、ひねくれた言葉が。」
一之輔「ひねくれてるんですよね。」
宇垣「ひねくれ感は、この短い時間でもなんとなく伝わってきましたよ」
一之輔「お察しがよろしゅうございますなぁ、宇垣さん」
篠田「ひねくれってやっぱり、日常から、捉え方とかそういうもので得ているんですか?枕の内容とか」
一之輔「真っ正面からいろんな物事を受け止めないようにしてますね。横から覗いたり斜めから見上げたり。まず悪口から入る捉え方とか。みんなが褒めてるものを疑ってかかるとか。そういうのは大事かもしれない。落語家自体がそういうところありますよ。ぼくまず師匠に言われたのが、褒められたら気をつけろって。罠かもしれないから。それで、怠らせようという。寄席は団体ですけど、結局は個人ですから。だから、人が褒めてきたら真っ正面からそれを受け止めるのじゃなくて、ちょっと穿って、それでいいのかほんとに?って思ったほうがいいって。最初に言われました。」

ここで一旦ブレイク。
一之輔チョイスで一曲。
中学の時、ユニコーンが好きだったという。
ペリーの黒船のこと歌った曲。

ユニコーン、車も電話もないけれど

ゲストの選曲する曲を聴くのも、このラジオ番組の楽しさの一つ。

そして、トークの再開。

「寄席ってプログラムは決まってるんですけど、誰がなにやるって事前に告知してないんですよね。」

篠田「一之輔さんは、何本くらいの噺を覚えてるんですか?」
一之輔「200くらいですね。」
アポ「いっぱいないと、先にされたらとかあるんですよね。」
一之輔「そう、寄席ってプログラムは決まってるんですけど、誰がなにやるって事前に告知してないんですよね。それで、20人とか30人とか出るんで。前の人と同じ話はできないし。同じ種類の話、例えば酔っ払いがでるとか、子供が出るとか、先にされると、もうその日はそれはできないんで。ある程度ストックがないと。」
アポ「最後の方にやる人、すごいですよね」
一之輔「トリが大変なんですよ」
アポ「それで笑いもとらないといけないし」
一之輔「200いまやれっていきなりはできないですけど。一日もらえれば、思い出してできますが。」
篠田「寄席って、入れ替わり制じゃないですか。例えば、末廣亭行ったら、次のとこって移動される方もいるし。前になにをやってたか、わからなかったりしません?」
一之輔「だから、30分前にだいたい楽屋入りするんですよ。そうすると、昔の大福帳みたいな長いネタ帳に、前座さんという若手が、筆で書いていくんですよ。今日は誰がなにやったって。それを見て、自分はじゃあなにをやろうかなって判断して。その30分の間に決める感じですね。」
宇垣「じゃあ逆にそこまではなにも決めずにいくってことですか?」
一之輔「それが多いですね。」

「寄席には流れがあるんです。打順のように。一番は塁に出る、次は送るとか。一番トリが一番いい流れで高座に上がって、お客さんが満足するのが、一番いい興行なんです。」

一之輔「あとね、ネタの感じで今日のお客さんどんな感じか分かりますよ。前のネタの流れみて、わかりやすいのが並んでると、今日のお客さんあまり慣れていない、落語に。だからみんなわかりやすいの選んで、すぐ笑えるような話やってんのかなって。自分もそれで臨むっていう。」
篠田「流れを見るわけですね」
一之輔「渋い話が並んでいると、今日はツウのお客さんが多いのかなとか。そういうのわかるんで。あと、全然笑わないお客さんの日もあり、そういう流れで自分の番まで来た時に、自分の役割はなにかと考えたり。起こす(笑わせる)のが自分の役割だな、ってキツめの話やって起こすと、その後が陽気になってくる。よく笑うお客さんになっていくと、ああ、いい仕事したなって。寄席には流れがあるんです。打順のように。一番は塁に出る、次は送るとか。一番トリが一番いい流れで高座に上がって、お客さんが満足するのが、一番いい興行なんです。個人営業のようで、実は団体競技みたいなところもある。」
篠田「駅伝のように、たすきをちゃんと渡していくわけですね。」
一之輔「そういうのが、みてくとわかってきます。」

「(紙切りは)夢を形にしてくれる芸です。」

篠田「寄席って、落語だけじゃなくて漫才や、紙切りもありますよね。私、紙切りが大好きで。オーダーすると、それを切ってくれる。無理難題を言っても切ってくれる。」
一之輔「なんでも切ってくれます」
宇垣「どんな無理難題でもですか?」
篠田「夢を形にしてくれる芸です。」
アポ「あ、夢を形にしてください、ってオーダーしたのかと思いました。」
一之輔「あ、そういうのも切りますよ。あの師匠たちは、ほんとに。」
宇垣「概念を言っても全然大丈夫だと」
一之輔「 希望、とか言っても、それを切ってくれる。」
宇垣「すごい! それ面白そう」
篠田「だから、みなさんも落語へ。行ったことあります?」
アポ「僕は、芸人なんで、けっこういろんな人のを見させてもらって。勉強させてもらってますね。」
宇垣「特に間の取り方が、アナウンサーもすごく勉強になる部分も多くって。先輩にも、行ったほうがいいよと言われて。何回か行きました。」
一之輔「(アナウンサーで)来る方多いですよ。外山さんとか。」
宇垣「好きでらっしゃいますもんね」
一之輔「後ろのほうで怖い顔してみてますもん」
宇垣「圧はわりと強そう」
一之輔「圧は強いんですよ!」

「弱い人間も、そこにいていいんだという。そういうコミュニティなんですよね、落語の舞台って」

篠田「落語の話ってそもそも、江戸時代の生活の話が多かったりするじゃないですか。その江戸時代の話、そこから学ぶことってけっこうありますか?」
一之輔「学ぶことかぁ」
篠田「今に活かせることとか」
一之輔「あの、わかんない単語とかアイテムとかいっぱいあるじゃないですか。江戸時代に使っていて今は使ってないとか。そういうのがハードルになって、とっつきにくいとかあるかもしれないんですけど、あんまり関係ないですね。そういうの取っ払って、落語って人間の内面とか、他人との付き合い方とか、生活とか、市民の思いとかを描いてるんで。今もやってるということは、現代の人にも共通のそれがあるということだから。それに、江戸時代から明治大正、昭和と幅広いですよね、古典落語って。なんかね。優しいんですよね。他人に。人に優しい人たちがでてくる。」
篠田「人情?」
一之輔「人情っていうか、殊更に優しいわけではなくて、接し方が、いいよいいよそれくらいのことは、っていう感じのスタンスの人が落語にいっぱい出てくる。ちょっと弱い人とか、ちょっといじめられる人とか。世の中にいっぱいいるじゃないですか。そういう人って排除されるじゃないですか。なんとなく。ちょっと向こう行っててくれ、って。このコミュニティに入んないでくれと。それが落語だと、そういう人に、ちょっとその辺にいろ、と。その辺にいて、一緒に、いくぞと。遊びに行く時も、ちょっと弱い奴も一緒に連れてって。そいつが主人公になっていったりとか、脚光を浴びたりとかいう物語がけっこうある。」
篠田「弱い者も、キャラクターが活かされるってことなんですね。」
一之輔「いいよいいよ、なんとなるよ、みんなでなんとかなるよ、ってなる世界なんですね。それが、僕も喋ってても、聞いててもなんかよくて。いまなんかね、すぐ攻撃したりとかあるじゃないですか。」
篠田「強くないと生きていけないみたいなとこ、若干ありますよね。」
一之輔「へこんでも、弱い人間も、そこにいていいんだという。そういうコミュニティなんですよね、落語の舞台って。長屋とか。」
アポ「距離感が近い。」
一之輔「近い。すごい近い。土足で踏み込んできたりしますから。急にガラッと戸を開けてはいってきますから。いまだと、ピンポン押して、カメラで確認して、セキュリティがありますけど。そういうんじゃないんすよ。」

チケットが飛ぶように売れていて、なかなか観られないという春風亭一之輔のチケット。
まだ手に入るものも、わずかにあるかもしれない。
詳しくは、ホームページをチェック。

http://www.ichinosuke-en.com

かなり落語が聴きたくなる、一之輔氏の語りであった。 落語の中にグッドライフのヒントがある気がして、胸が高鳴る。 近いうちに、なにか寄席観に行こう。

番組へのメッセージもどしどし募集中
lab@tbs.co.jp

今回の放送の様子もあげられている。

【放送後記】#7 ゲスト:春風亭一之輔さん

ラジオクラウドもあげられている。

【ラジオクラウド配信】2018年11月13日(火)「篠田麻理子のGOOD LIFE LAB!」ゲスト:春風亭一之輔さん

来週の後編も非常に楽しみだ!

 

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映画、音楽、本のことを中心に、役に立つかどうか度外視して書きたいこと書こうと思っています。サブカルなイベントもよく行くので、そのレポートみたいなことも書くかもしれません。