冥府魔道に生きるベニチオデルトロの目つきが怖い! サンダル履いてるジョシュブローリンの鬼畜な所業! しかし、そんな修羅に生きる鬼の目にも涙。ズーンズーンズーンと響くヨハンヨハンソンのThe Beast が 耳から離れない。ボーダーラインの二作目、ボーダーライン ソルジャーズデイ/Sicario: Day of the Soldado をみてきたぞ!!

シカリオ。それは、暗殺者という意味だ。

冥府魔道に生きる殺し屋の物語。

シカリオの二作目、ボーダーライン ソルジャーズデイを観てきたぞ。

ボーダーライン ソルジャーズデイ/Sicario: Day of the Soldado (2018)。ステファノ ソリマが監督、脚本はテイラーシェリダン。ベニチオ・デルトロ、ジョシュ・ブローリン、イザベラ・モナーらが出演。ボーダーライン/Sicario(2016)からの続編。

アメリカで起きた惨劇。そこに麻薬カルテルの影を見出し、ジョシュ・ブローリン扮するCIAのマットは、前作以降半隠居状態にあったベニチオデルトロ演じる”シカリオ”(暗殺者)のアレハンドロに仕事を依頼。メキシコ麻薬カルテル同士を戦争に持ち込むべく、巨大カルテルのボス、カルロスレイエスの娘、イザベラ・モナー扮するイサベルを誘拐。首尾よく作戦を進めていたが、国境線付近での予想外のメキシコ警察からの襲撃により、事態は混乱。

一方、カルテルからの請負仕事を近所のあんちゃんの勧めで手伝うことになったメキシコの少年、ミゲル。ひょんなことからミゲルとアレハンドロの運命が交錯、事の成り行きを大きく左右していく…

まず、冒頭の、意表をつくような惨劇に度肝を抜かれる。この映画全体のトーンをそこで知らしめられる。これくらい無慈悲で容赦のない暴力が巻き起こる映画ですよ、と宣戦布告している。ヨハン・ヨハンソンが手がけた重厚感があり不吉な音楽も相まって、異様な緊張感、サスペンスが冒頭から映画を通して持続する。

冒頭の下りを経て、ジョシュ・ブローリン演じるCIA捜査官のマットがクロックスみたいの履いて短パン、そしてヒゲモジャ面といったやたらドレスダウンしたカジュアルな風貌で現れる。そこから始まる拷問シーン。どんなひどい拷問をするかと思いドキドキして観ていると、ある意味でもっとも容赦ない、麻薬カルテルじみた無情な方法で相手を追い詰める。装いのカジュアルさと、言動のハードコアっぷりのギャップでおそろしさ倍増。麻薬カルテルと戦う男は、麻薬カルテルと同じくらい狂っているし怖いということを見せつけ、マットという男のなにをしでかすかわからない感を観るものに印象付け、ただでさえ高まっている緊張感をさらに高めていて、もうどうしてくれるんだと。

アレハンドロもまた、どう考えても目つきがおかしい。冥府魔道に生きる者の目だ。予告編でもちらっと写る、ベレッタ92Fを人差し指でマシンガンのように弾き至近距離で相手に全弾打ち込む狂気。アディオース! ボーダーライン一作目でのアレハンドロのあのクライマックスでの怖さを彷彿とさせる凄み。アレハンドロもまた、マット以上に異常で、なにをしでかすかわからない。なによりも彼にはカルテルに家族を惨殺されたあまりにも深い恨みがあり、それが常軌を逸したシカリオっぷりに彼を駆り立てる。

それら狂人たちの麻薬カルテルとの対決が、アレハンドロの復習譚として映画を盛り立てていき、ダークで緊迫してて、すでに最高なのだご、中盤以降の展開で、トーンが変わる。カルテルの娘を誘拐し利用すること。それはアレハンドロに、「かつてカルテルにされたことと同じことを自分がしようとしてる」というフラッシュバックを与え、殺人マシーンとして邁進していた彼に、感情の揺らぎをもたらす。アレハンドロがかつての自分の娘の姿をイサベルに投影した時、単なる地獄の復讐譚とは別の物語が動き出す。

憎きカルテルを殺すことに人生を捧げてきたアレハンドロが、そのカルテルのボスの娘の命を守ることに己の命を賭ける。冷徹で狂っていて、憎しみ怒り以外でエモーショナルになる様子を見せなかったアレハンドロが別のエモーショナルさを見せる時、観ているこちらもエモーショナルにならざるをえない!

前作に続いて脚本を手がけたのは、いま最も注目すべき脚本家であり監督の一人、テイラーシェリダン。最後の追跡、ウインドリバーといった彼が手がけた他の脚本とこのボーダーラインはあわせてフロンティア三部作と言われている。むき出しになった残酷な世界としてのフロンティア。

それらの作品で共通しているのは、主たる人物が他者からの暴力によって、大切な人や最愛の人を亡くすということ、それに対する復讐譚というのが基本的な設定としてあるように思う。

しかし、ただド派手に復讐を遂げて、カタルシスをもたらしてくれるわけではない。彼らは、復讐の遂行の過程で、躓く。敵と向き合う時、アメリカという国がしてきたことや、その復讐行為がもたらすものにも向き合わざるをえない。当の相手はぶっ飛ばすが、それでも問題の根は残り、溜飲は下がりきらないまま終わる。

今作では、途中までは復讐譚でありながら、中盤以降、復讐のその先の次元のなにかに手をかける。アレハンドロとイサベルのやりとり、関係性の変化はスリリングであり、グッと胸に迫るものがある。そして、劇場が静まりかえる音が聞こえるような、衝撃の後半の展開。どうなっていくんだボーダーライン!2作目である本作の、その次、3部作の完結編への期待が高まりすぎて待ちきれない。

しかし、ウインドリバーも最高だったし、テイラーシェリダン、どうなっているんだ。アメリカの西部劇を描く書き手として、クリントイーストウッドの正規後継者とも言えまいか。メキシコの国境のテキサスやアメリカンインディアンの歴史のある中西部を舞台にしてアメリカのいまのリアルを抉り出し、話としても超楽しめる西部劇を紡ぎ出せるのは、テイラーシェリダン一択!

次のボーダーライン、というかシカリオ! 震えて待つ。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です