TBSラジオ「粋な夜電波」が、12月29日の放送で終了する。菊地成孔が選曲とトークを行う番組で、2011年4月から開始された。菊地の本業ジャズを始め、アンダーグラウンドのHiphop、海外のポップス、難解な現代音楽、昭和歌謡、果てはジャニーズまで紹介する懐の広さで、私のリスニングの射程は数倍に拡張された。ここではこの番組で紹介された曲のなかで、私の好きな5曲を紹介したい。
①Nabundeare ~Nicole Bunout ~
チリのシンガーソングライターがアコギ一本で歌うこの曲。スペイン語?なのか、歌っている内容が全く分からないが、たぶん幸せな曲のような気がする。Nicoleの口の動きが伝わってくるほどの肉薄した録音。南米や東ヨーロッパといった地域の音楽も紹介したのが夜電波の大きな功績だと思う。
②Chorinho for Tati ~Tatiana Parra&Vardan Ovsepian~
ブラジル出身歌手Tatianaとアルメニア出身ピアニストVardanのデュオ作品。Vardanのポリリズムを駆使した幾何学的な伴奏の上を、Tatianaが飄々と歌い上げていく。長調と短調の間を揺らぐようなメロディー、そして終盤のピアノと歌の掛け合い。ヴィルトーゾ2人の戯れは必聴。
③Song for Insane time ~Kevin Ayers~
キャッチ―な明るいイントロからのアンニュイなKevinの歌へのコントラストが印象的。たしか番組中のヘッドフォン会社CMの曲として使われていたはず。
④Los Ninos Del Parque ~Liaisons Dangereuses~
特集企画クラブナルの冒頭、浜辺でのシュールな話のバックで流れていた曲。アナクロな音色のシンセが反復するフレーズ、異物感のある転調、そこに入ってくる狂女の声。一聴してこれはヤバい曲だと思った。このサイトのライターであるyamaさんから教えてもらったところ、初期のテクノ?の傑作らしい。
⑤Aguas De Marco ~Tom Jobim~
シーズン1の最後の曲として流された曲。離婚、愛犬の死などで精神的危機にあった時期にJobimが作った超有名曲。歌詞はイパネマの娘の1%のポピュラリティーもないほど、暗示的で思索的。こんな歌詞の曲が世界的大ヒットになったのだから、この世界にもまだ希望が持てる。
「そして川岸が語る 三月の水 絶望の終わり 心の喜び ~中略~ この足 この地面 枝 石ころ これは予感 これは希望」(菊地成孔訳)
②はyoutubeとamazon musicで聴ける。それ以外はApple musicで聴くことが可能だ。
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