2018年に日本で劇場公開され、観た映画は以下のようになる。
キングスマンゴールデンサークル
ヴァレリアン 千の惑星の救世主
スリービルボード
羊の木
犬猿
サバービコン/Suburbicon
悪女
1517 パリ行き
ブラックパンサー
ダウンサイズ
シェイプオブウオーター
リメンバーミー/Coco
娼年
ジュマンジ ウエルカム トウ ジャングル
Last Flag Flying
ラッキー
クソ野郎と美しい世界
ミスミソウ
タクシー運転手
パシフィックリム アップライジング
レディプレイヤー1
女は二度決断する
アベンジャーズインフィニティウオー
アイトーニャ
君の名前で僕を呼んで
犯罪都市
モリーズゲーム
孤狼の血
フロリダプロジェクト
犬が島
デッドプール2
万引き家族
ゲティ家の身代金/ ALL THE MONEY IN THE WORLD
レディバード
ワンダー君は太陽 / Wonder
カメラを止めるな
REVENGE
ブリグズビーベア
菊とギロチン
ミライの未来
MIP フォールアウト
ウインドリバー
オーシャンズ8
SHOCK WAVE
インクレディブルファミリー
タリーとわたしの秘密の時間
ペンギンハイウェイ
検察側の罪人
あみこ
Searching/ SEARCH サーチ
ザ プレデター (2018)
SPL 狼たちの処刑台
愛しのアイリーン
クワイエットプレイス
クレイジーリッチ
プーと大人になった僕
アンダーザシルバーレイク
イコライザー2
若おかみは小学生
デスウィッシュ
ジ アウトロー / Den of thieves
バッドジーニアス
ヴェノム
マンディ 地獄のロードウォリアー
ボーダーライン ソルジャーズデイ
ボヘミアンラプソディー
へレディタリー 継承
斬 /Killing
来る
暁に祈れ
71本。
去年よりも今年はたくさん映画を観た。それでも、観れてない、観たかった作品はたくさんある。来年はもっと観たい。
俺はどこへ向かおうとしているのだろう。前に進んでいるのか、何かから逃げ続けているのか、よくわからなくなる。
正気とは狂気だ。我に帰るスキマは埋めろ。
スクリーンの前で、劇場の暗闇の中で、生きのばし。
人生はハードだ。 もう映画しかない夜がたくさんある。
幾多の夜を共にしてきた映画たち。
映画に順位などつけられないけれど、今2018年の年末の気分で選んだ私的トップ10を以下に!
10位 マンディ 地獄のロードウォリアー
監督:パノス・コスマトス
脚本: パノス・コスマトス
出演: ニコラス・ケイジ、アンドレア・ライズブロー
1983年、山奥。彼女のマンディと慎ましく暮らしていたニコラスケイジだったが、ヒッピー崩れのクソカルト野郎どもの手でマンディが目の前でおぞましくも酷い目に。怒りのままに冥府魔道を進み、復讐をはたしていくニコラスケイジであった…。
ニコラスケイジの人間力、そのパワーで最後まで燃やし尽くす。
なんなんだよ! 最高かよ! を繰り返し叫んでしまう映画。
王道なリベンジ・ジャンル映画のプロットでありながら、ドラッギーな映像、血まみれのニコラスケイジ、やたら凶々しくて強そうな武器、ニコラスケイジの長回しの叫び、とエクストリームな楽しい要素がてんこ盛り。
なんであんなとこにウォッカしまってんの? トイレ? そして酒を飲み、叫び!の長回し! なんなんだあれは。最高だ。
「敵を殺して捨てセリフ」ならぬ、「敵を殺して拾い食い」な見せ場も印象的だ。 殺したあとにコカインを拾ってぺろりしたり、シケモク拾って、倒した敵が燃えてる炎でそれに火をつけて吸ったりしてキメる。
前半は嵐の前の静けさ、静かにゆったりと時間が過ぎるが、いざリベンジだ!ハンティングだ!となってからの激しさといったら! ラストも衝撃!
9位 ウインドリバー
監督: テイラーシェリダン
脚本: テイラーシェリダン
出演: ジェレミー・レナー、エリザベス・オルセン、ジョン・バーンサル
雪深いアメリカ ワイオミング州のインディアン自治区、ウインドリバー。その厳しい自然の中で自然管理を担うジェレミーレナー演じるコリー。
コリーがピューマ退治のため雪山を散策していたところ、あるインディアンの少女の死体を見つける。彼女の死因は、マイナス30度の中雪の中を裸足で走り、肺が凍って喀血しての窒息死だった。それは、彼の親友マーティンの娘だった。
自身も、愛する娘をなくしているコリー。捜査に来たFBIの犯人探しに協力していく…。
ジェレミーレナーの抑制のきいた激渋な硬派な演技が絶品。緊張感途切れぬクライムサスペンスで、雪山が舞台の西部劇。ボーダーラインや最後の追跡の脚本にテイラーシェリダンが監督脚本を務めている。
憎むべき、愚かなる行為に対して、表向き、決して激昂しない。ただ静かに佇むコリー。
そのコリーの姿に、グッとくる。
コリーの内側では熱いものがたぎっている。その激しさは、クライマックスのリベンジの無情さ、徹底した裁きを行使する様で垣間見ることができる。「彼女は、10キロも走ったんだ」という言葉の重さ、強さ。
雪深い景色。観た後にじんわり残る余韻。
「アメリカンインディアンの行方不明の少女の数はいまも不明」というリアルに、怒りと悲しみがこみ上げる。
テイラー・シェリダン脚本だと、今年はボーダーラインの2作目も最高だった!
8位 カメラを止めるな
監督:上田慎一郎
脚本:上田慎一郎
出演:濱津隆之、真魚、しゅはまはるみ、長屋和彰、細井学、市原洋、秋山ゆずき、山崎俊太郎、大沢真一朗、竹原芳子、吉田美紀、合田純奈、浅森咲希奈
2018年の邦画における事件であり、超話題作。
6月末のやったら蒸し暑い日の、池袋シネマロサで観た。
劇場の笑いと、終わった後の拍手が忘れられない。
何十年後かに、俺はカメラを止めるなを舞台あいさつつきで劇場で観たんだぜ、大盛り上がりだったぜって、自慢できるような作品。
フィクションでありながら、この作品自体がドキュメント。鑑賞後の爽快感は、テレクラキャノンボール2013を初めて見た後の感覚に似ていた。
予算も時間的余裕もない製作環境を逆手に取り、ひっくり返す、革命のような映画。
観ると、無茶をして、何かをしたくなる。青春のあの感じが、再来する。
7位 万引き家族
監督:是枝裕和
脚本:是枝裕和
出演:リリーフランキー、樹木希林、松岡茉優、安藤サクラ
捨てられた!そこにいられなくなった! 共同体からこぼれ落ちてしまった人たちが、なんとかしてつくりあげようとした共同体、万引き家族。
パンフに、「様々な家族の形を真摯に見つめ続けてきたら是枝監督だからこそ描ける、真のつながりとはなにかを問う作品」と書いてあったが、そう、まさにそんな感じする。
東京の片隅の小さな物語を通して描かれる宇宙。社会の表通りからみえない人たちの、秘密基地のような生活。
万引き家族の彼らのしていたことは社会的に許されず、建設的な未来のないものだった。しかし、たとえそうだとしても、東京の四季の中での、家族の生活のそれが輝きすぎていて、人間がそこにあって、四角四面な「正しさ」よりも、説得力のある「正しさ」があった!
夏のシーン輝いていたなぁ。素麺食べて、雨が降って、SEXのくだりがエロかったなぁ。永遠と刹那。あれは、本物だよあの瞬間、夏。みえない花火を、音だけきく。家族。あのシーンはすごい。みえないけど、存在している。みえないけど、存在しているのだ!
是枝裕和監督の映画が突きつけるのは、答えではなく問い。家族とは、人間らしさとは。社会の網の目からこぼれ落ちる人を社会はどう包摂していくべきなのか。
人のつながりなんて脆く不確か! クソみたいな気分だ! って時に、何度もこの映画に立ち返って、大事なことを思い出したい。
6位 へレディタリー: 継承
監督:アリアスター
脚本:アリアスター
出演: トニコレット、アレックスウルフ、ミリーシャピロ
今世紀で一番怖いというふれこみは伊達じゃない。超怖いし、繰り返しの鑑賞に耐えられる緻密さ、構図の斬新さも圧巻。
最悪に胸糞悪いふて寝シーン。最悪に飯が喉を通らなくなりそうな家族の食卓シーン。最悪に趣味の悪いミニチュア… そんな最悪、つまり最高、なシーンがたくさんある。
サブリミナルな、ん? という違和感。不吉なモチーフの積み重ね。身体的な恐怖の感覚が蓄積し、ラストでは臨界点を超える。
超常現象ホラー? おかしくなった人がみている悪夢? 話はどこにいくかわからず、振り回される。そして、最後まで観た後だと、また輪をかけて怖い!
最後に流れる曲、青春の光と影(Both sides now)。物事には2つ以上の側面があり、それがみせる幻想もある、という歌。
「わかったような気になっていた人や物事に対して、実はなにもわかっていなかった」のだ、映画の中のあいつも、観ていた私たちも。
5位 イコライザー2 (2018)
監督: アントン・フークア
脚本: リチャード・ウェンク
出演: デンゼル・ワシントン、ペドロ・パスカル
イコライザー2を観てないって?
マジかよ!
こんなにアガる映画、他にないって。
シリーズ物にはでないデンゼルワシントンが、出ただけのことはある。テンションぶち上がる映画!
タクシー運転手として、暮らすボストンの町の平穏を確かめながら生きるデンゼルワシントン扮するロバートマッコールさん。趣味は読書。身なりは地味。地井武男がちい散歩で被っていたようなハンチング帽スタイル。
しかし、実は、マッコールさんの強さはもはやスラッシャーホラー。 マッコールさんが時計のストップウォッチをスタートすればそれはもう殺しへのカウントダウン。もう、絶対的に死ぬ。勝てない。
殺し方も的確でいて、残忍。そして、身近なものを上手く活用するという無駄のなさ。
人格形成のために本を読むことの大切さも、改めて教えてくれるマッコールさん。マッコールさんのように「失われた時を求めて」を読破してみたいものだ。 若者が犯罪に手を染めないためにも、やはり読書です。
しかし、憎き相手には「一回しか殺せないのが残念なくらいだ! 」と口元は笑って目は笑わないで言ってのけるマッコールさん。クソ野郎をぶちのめすことには、一点の迷いもないマッコールさん。
クライマックス、雨風吹き荒れる中でのマッコールさんの、もはやハンティングとも言える、処刑の遊戯に戦慄。
4位 アンダーザシルバーレイク
監督:デイビッド ロバート ミッチェル
脚本: デイビッド ロバート ミッチェル
出演: アンドリュー・ガーフィールド、ライリー・キーオ、グレース・ヴァン・パットン
シルバーレイク、っていうのはシルバーなんとかさんが出資した貯水池のことで、LAのイーストサイドにある。
そのエリアで暮らす無職の33歳、アンドリューガーフィールド演じるサム。仲良くなった同じアパートの女の子が突然夜逃げのように姿消し、その跡を追ううちに、サムはLAの裏社会へと繋がる、様々な意味深な暗号と出くわす。ポップカルチャーの知識などを駆使してそれらを解き明かしていく。奇妙なLA裏社会映画。
ヒッチコック映画のバーナードハーマン劇伴のような、仰々しくスリリングな音楽に乗せ、さながら私立探偵のように裏社会の深部へと突き進むサムだが、どこまでが現実で、どこからがサムの幻覚、悪夢なのか、その境界線は曖昧だ。まるで、悪夢的イメージのコラージュのように、めくるめく映像。しかし、話の筋は空中分解するが、なんだか心地よい。
アンドリューガーフィールドが体現する、サムの肩から歩く感じの、あの身のこなし。最高だ。車にいたづらした子供をグーで殴る、しかも、まずは腹を。なんなんだよ。最高か。
暗号を解読していくくだりの中でも、NPMはなんの略なんだ?!と考え抜き、あっ!と閃いてからの展開がすごく好き。不条理で、馬鹿馬鹿しくて、現実とその外側が繋がって、世界が拡張する感じ。
ソングライター、のところを訪れるシーンも最高。あの曲が、まさかあんなことに!
映画イメージでも使われている、ライティングでギラついたLAの夜とプールの青と裸のライリー・キーオの構図、素晴らしい。裸でシルバーレイクを泳ぐシーンも、LAの夜景との組み合わせが最高。水が出てくるシーンがとても印象的な映画。
筋違いの場面のコラージュのような連続の果てに、どこへ向かうのか、と宙ぶらりんな気持ちで観ていると、ホームレス王がでてきて、「なぜ犬のビスケットをポケットにいれていたのだ?」と問う。解釈間違ってるのかもしれないが、あそこの場面でのサムの回答に、何度見ても、泣きそうになる。サムがはじめて自分自身の過去と向き合い、ちょっとだけだが、確実な前進をする。
3位 リメンバミー / Coco
監督: リー・アンクリッチ、エイドリアン・モリーナ
脚本: リー・アンクリッチ、ジェイソン・カッツ 他4クレジット
ピクサーの最新作ということで、とりあえず観に行ったわけだが、とんでもない名作だった。
わけあって音楽禁止の家族で、音楽をやりたくて仕方ないミゲル少年。どうしても音楽やりたいあまり、憧れの音楽家の墓からギターを盗んでしまう。その音楽家は自分の先祖だった。そして、死者の日のどさくさで死後の世界に紛れ込み、会いにいく。その道先案内人となる、キン骨マンみたいな造形のヘクター。ミゲルとヘクターの死後の世界行脚の果てに、驚きの事実が明らかに…。
家族をひきさいたのも音楽なら、家族をひとつにしたのも音楽だった。呪いをかけたのも音楽なら、呪いを解いたのも音楽。
夢追い少年と家族の対立のはなしかと思えば、死に別れた家族の再会の話で、その死に別れた原因が音楽なら、また出会うきっかけも音楽ってのが、もう、泣けるよまじで。
プロットとしてはなんてことない勧善懲悪のファンタジーなんだが、リメンバーミー、という言葉が、歌が、ミゲルにとって、そしてヘクターにとって、切実な意味を持って語られ、歌われ、そして伝えられるエモーションに、どっぷり感動してしまう。その人のことを、覚えている、ということの大切さ。難しさ。忘れてしまう切なさ。ならば歌にしよう、リメンバーミー! 覚えていてくれよ!というメロディー。
死後の世界を描いたもので、こんなにも切実で、生きているひと、残されたひとの希望になるものはあるだろうか。
会えなくても、思い出せるのならば、存在し続けてくれる。
全子供がみるべき。
全大人がみるべき。
観終えて、月並みだけど、墓参りは絶対行こうと思った。
2位 レディ・バード
監督:グレタ・ガーウィグ
脚本:グレタ・ガーウィグ
出演:シアーシャ・ローナン、ビーニー・フェルドスタイン、ローリー・メトカーフ、ティモシー・シャラメ、ルーカス・ヘッジズ
映画は、忘れてた大切な事や感覚を思い出させてくれたり、青春時代を追体験させてくれる。
レデイーバードは、まさにそんな映画。
自らを”レディバード”と名乗るクリスティンの、カリフォルニア州サクラメントでの高校3年生の日々と、そこから卒業し、大学生になるまでの話。
人生におけるまだ何者でもない時代の、何者かになろうと理想を抱き、何者でもない現実で焦り苛立つ日々、しかし振り返ってみるとそこに永遠の刹那の輝きがあるんだよな。
地元を出て都会に出たことある人なら、誰もが感じるあの感じ。閉塞感があって、そこから出たいと思っていたその場所は、そこから出てみると、どれだけ自分にとって大切で、懐かしくて、自分を支えていたかに気づく。
サクラメントって、タワーレコードの第1号店の土地。2002年、2003年あたりの話だから、まだタワーレコードが写っているのがエモい。どこかレトロで、昔からあるものがそこに残されているサクラメントの街並み。普遍的な閉塞感、地方感が、グッとくる。
コメディとしてもすぐれてる。テンポいい。父親が無職という設定が斬新だった。息子と同じ会社の就職の面接行ってたくだりは笑った。
自分がいまどこにいるのか、どんな道を辿っててきたのか確認して、これからどうするかに思いをはせるために、何度も節目で観返したい作品。
1位 斬、
監督:塚本晋也
脚本:塚本晋也
出演 :池松壮亮、蒼井優、塚本晋也、中村達也
2018年、この「斬、」よりも娯楽性が高い映画、アート性が高い映画、社会的なテーマをうまく扱った映画は、たくさんあっただろう。
しかし、この作品よりも、作り手の気合いと魂がどすんと伝わる映画は他になかった。
鉄男で長編デビューした塚本晋也監督が、鉄男を彷彿とさせるテーマで、現在の塚本監督の問題意識、培った経験を反映させて、鉄男の時と変わらぬ衝動で作ったと言える作品。
1stアルバムがタイムレスな名盤のパンクバンドが、デビューから何十年後に、同じレベルの衝動で、技術的にもテーマ的にもより洗練させてリリースした、奇跡の名盤のようだ。
重厚感があり、生々しい刀の音、鉄の音が、鑑賞後も残響音のように脳内で鳴り響く。
娯楽性を排除した、危険で、リアルな暴力が描かれるが、暴力に伴うエロスは排除されていない。危ない、遠ざけたいものだが、なんだか惹かれる、手にしてみたい。そんな倒錯した気持ちにもなる。
人間は危険だ。自分も人間だ。それを思い知る映画。
でも、それを思い知らなければ、制御することもできない。
こんな感じで、2018年映画トップ10をまとめてみた。
いい映画をたくさん観た一年で、振り返れば、楽しかった。
でも、幸せとは、それを分かち合う人がいることだ、みたいなことが燃え殻の「ぼくたちは大人になれなかった」に書いてあった気がする。
そういう意味では、楽しかったが、幸せではなかった。
2018年、30歳を迎えたが、「大人になれなかった」という気分は濃厚だ。
2019年も、幾多の、もう映画しかない夜、を越えていくのだろう。
人生はハードだ。しかし、できる限り、全力で、楽しんでいきたい。
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