正月、帰省して 、地元の北海道で過ごした時のこと。
年が明けて、地元の温泉に行った。
外気がマイナス10度の中での露天風呂。
その非日常性、漆黒の闇に煙る湯気が、物思いに耽るのにうってつけな世界を作り出していた。
2019年、どんな一年になるか。
地元では、下の世代の誰それが結婚し、子どもを授かったと聞く。
同世代の多くは結婚し、二人目を授かった人も多いと聞く。
親からは、あと2年くらいで身を固めろよ、とさりげなく言われた。
これからどうなるのか。
30代がスタートしたものの、しっかりした関係を結ぶこともできず、結べそうな期待も抱けないまま。
その時見上げた深く黒い空のように先の見えない未来。
そんな気分で湯に浸かっていると、
男二人組の会話が聞こえてきた。
どうやら、地元の同級生同士の二人組のようだ。
やれ、あいつはいまなにしている、あいつはどうだった、など昔話している。
こちらはじっくり浸りたいのに、いやでも会話が耳に入ってくる 。
うるさいな、と思いながらも、不可避に聞こえて来るので、彼らの会話に耳を傾けた。
どうやら、かつてのクラスメイトに似ている、ある芸能人の名前を思い出せずにいるようだった。
男A「ほら、あいつ、あれに似てたよな、あさ、あさなんとかっていう姉妹のさ」
男B「あー、はいはい。双子のやつだろ?」
男A「双子? いや、双子じゃねえだろ。似てるけど。姉妹だよ。なんて言ったっけ、けっこうおばさんでさ」
男B「え? 姉妹? 叶姉妹?」
男A「叶姉妹じゃねえよ、芸人だよ。」
男B「芸人か。 あー、あのおばさんみたいな? メガネかけてるやつな。似てるかなぁ。」
男A「似てるよ。なんて言ったっけなぁ、あさがわ、あさかわ」
男B「あさ、なんとかだったよな。細かすぎて伝わらないモノマネのやつとか出ててな。あれ超面白いよな。」
男A「面白いよな。いやー、なんだっけな、あさかわ、あさがわ、」
男B「…芸人といえばさ、俺、最近すげえ好きな芸人いてさ。」
男A「へぇ、誰?」
男「ナダル。」
結局、ナダルの話で一通り盛り上がったあと、二人は露天風呂をあとにした。
北海道の片田舎と、阿佐ヶ谷の、いかんともしがたい距離を感じた。
もやもやする話だ。
しかし、そのもやもやする話を聞いたあと、不思議と、露天風呂に入った時に物思いに耽りながら抱いていたもやもやした気分は、どこかへ行ってしまっていた。
色々あるが、今年も、くだらなくて、楽しく、健康で、平和な一年になれば、それでいいや。
楽しいことに全力でありたい、そう思った。
暫くして自分も、露天風呂を後にした。
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