ドラゴ親子の物語に落涙。2019年はスタローン愛を深めたい。「クリード2 炎の宿敵」を見てきた。

クリード2をみてきたぞ。 これは、男が号泣する映画だ。

新宿 歌舞伎町で、俺は号泣してしまったのだ。

号泣して消費した水分を補給するためにラーメンをすするほどに、俺は号泣してしまった。

イワンドラゴのことが、 ヴィクタードラゴのことが、ドラゴ親子のことが、頭から離れない。

◆スタッフ 基本情報

クリード チャンプを継ぐ者(2015)の続編となる。前作で監督を務めたライアンクーグラーは製作に回り、監督を務めたのは、 The land(2016)という自主制作映画監督からの大抜擢であるスティーブン・ケイプルJR。脚本はシルベスター・スタローン、チェオ・ホダリ・コーカーらが務め、マイケルBジョーダン、シルベスター・スタローン、テッサ・トンプソン、ドルフ・ラングレン、フロリアン BIG NASTY ムンテアヌ、ブリジット・ニールセンらが出演。

◆簡単なあらすじ

前作での劇的な死闘から、アドニスクリードは快進撃を続け、ヘビー級のチャンピオンベルトをかけた戦いに挑戦できるまでになっていた。難なくチャンピオンを倒し、ベルトを手にするアドニス!父のアポロ、師であるロッキーバルボアも巻いていたベルトだ。時はきたぞと彼女であるビアンカにプロポーズ。そっからのビアンカとアドニスのおめでたも発覚。そんないい感じの矢先、とあるニュースが舞い届く。それは、かつて試合中に父アポロを殺してしまったイワンドラゴの息子、ヴィクタードラゴとの対戦依頼だった! 交錯する運命。それぞれのドラマを背負い、避けられない戦いへとなだれ込んでいく…。

◆なんといってもドラゴ親子

この映画、なんといっても、ドルフ・ラングレン演じるイワン・ドラゴと、フロリアン BIG NASTY ムンテアヌ演じる息子のヴィクター・ドラゴの、ドラゴ親子の物語が印象に残り、感動的なのだ。

イワン・ドラゴは1985年公開のロッキー4において、アポロクリードを試合中に死なせてしまうほどの強さの旧ソ連の殺人マシーンとして登場。華々しく登場したが、母国での試合でロッキーバルボアに敗北を喫した。

それから、彼はどんな日々を送ってきたのか。多くは語られないが、この映画で描かれるドラゴの現在の姿と暮らしぶりは、それからの33年間の苦しみ、苦悩を存分に感じさせるものだった。ロッキーに負け、国を追われ、ウクライナのキエフでの乞食生活。日雇い労働しながら、曇り空の下、息子と暮らす。淀んで曇ったドラゴ親子の日々。父ドラゴが息子ドラゴにボクシングの全てを叩き込み、燃やす執念。

そして、ドラゴの物語に説得力を与えているのは、なんといってもドルフ・ラングレンの演技だ。多くは語らずとも、その佇まいが語るものの豊かさよ。最高の演技。そしてそれは、イワンドラゴの人生と、ロッキー4でデビューして以降の、決して華々しいとは言えないドルフラングレンの俳優としてのキャリアが重なることで、より一層味わい深いものとなっている。

ドラゴ親子はこの映画における、敵役だ。あばら骨を折ろうとするなど、暴力性むき出しでアドニスを追い詰めるヴィクター。トドメを刺せ!殺せ!、と極悪ともとれる叱咤激励をするイワンドラゴ。試合前の記者会見の場では、かつて殺したアポロクリードの息子のアドニスに向かって「親父より背が小さいな」と言い放ち、アドニスを激昂させる。決して、彼らは善玉として描かれているわけではない。

しかし、後半、気がつけばドラゴ親子を応援している自分に気づく。 敵にも感情移入できるの究極。それは、ドラゴ親子にとっての戦う理由、負けられない理由、賭けている人生の重さが、彼らの表情、繰り出すパンチ、彼らを取り巻くクソみたいな状況、それでも牙をむき出しにしてファイトを燃やす様子から、ビシビシ伝わるからだ!

イワン・ドラゴとヴィクター・ドラゴの33年間の重さたるや。そこに思い馳せれば、涙がこぼれる。

とにかく最高。ドラゴ親子の、この先を見たいと強く思わされた。

◆アンダードッグの物語

それで、やっぱり、ロッキー シリーズというのは、アンダードッグ、勝ち目のないものの物語なのだ。

ロッキーは、 もともと、三流ボクサーが世界チャンピオンに戦いを挑む、勝ち目のないものが大きな戦いに挑む、アンダードッグの物語としてはじまった。 それが、スタローン自身の人生と重なり、深い感動とドラマを作り出した。

ロッキーがチャンピオンとなり、ロッキー2、3、4とシリーズのスケールも増していく中での、原点回帰かつ終止符がロッキー ザ ファイナルで、新たなアンダードッグの物語を紡ぎ出したのが、クリード チャンプを継ぐ者 だった。

前作で「俺の存在は間違いなんかじゃない」とロッキーの指導の下での猛烈なトレーニングで勝ち目のない試合でファイトを燃やし、ドラマチックな展開をみせたアドニスクリードは、今作、クリード2では、アンダードッグの物語とはまた別の物語の中にある。

チャンピオンとなったアドニスは、自分の本質を明らかにし、そして父親のアポロクリードを超えていくために、過去から追いついてきた運命と向き合う。結婚もし、子どもも産まれ、一作目と状況は大きく変わっており、彼が抱える葛藤、悩みもまた、別種のものとなっている。

そのアドニスが自分と向き合い、戦う姿も胸を打つものだが、なんといっても今回はロッキーシリーズの肝であるアンダードッグの物語は、ドラゴ親子の側にあるのだ。クリード2 というタイトルでありながら、今作の本当の主役は、ドラゴ親子なんだと、思う。

◆ ロッキーバルボアという存在

とはいえ、この作品で、ドラゴ親子の物語が輝いているには、彼の存在がいるからに他ならない。

忘れちゃいけない、ロッキーバルボア。彼の存在が、やはり今作でもでかい。当然といえば当然だ。なにせ、ロッキーバルボアだ! ロッキーが画面に出てくるだけで、画面の熱量が増す。その一挙一動の説得力、魅力たるや。

シルベスター・スタローンはロッキー・バルボアを演じて、42年になるという。42年。42年生き続けたキャラクターの重み、深み。 もはや、フィクションのキャラクターというものを超えている。

アドニス・クリードも、ロッキーのコーチング、助言があってこそ、真に輝いている。恋人のビアンカへのプロポーズの時も、片膝ついてのプロポーズスタイル! ロッキーのアドバイスに素直に従った結果を思わせ、微笑ましい。

時にはぶつかり合い、距離を置いてしまうことにもなるが、強く心が通じ合っているアドニスとロッキー。その師弟関係、2人の心底仲のいいやり取りが、クリード シリーズの魅力のひとつでもある。

◆苦しい時間がドラマを生む

ヴィクター・ドラゴとの一戦に向けて、苦悩するアドニス・クリード。チャンピオンの重圧。ヴィクターは、ハングリーに、執念で向かってくる相手。スタンダードなスタイルが通じない相手。チャンピオンの座に上り詰め、結婚して子どもも授かったアドニス。前は、父であるアポロ・クリードがいつも側にいてくれたような気がしたのに、なんだかそれが消えてしまった、と、スランプ気味に。

そんなアドニスにワイルドさを再度注入すべく、ロッキーが仕込んだ、ワイルドでノーフューチャーなトレーニング。タイヤを使っての至近距離殴り合いトレーニング。炎燃え盛るドラム缶に向かって、パンチを繰り出す、夕陽をバックに。理にかなっているのかどうかは微妙なところだが、なんかすごい!

この、ひたすらに高まっていくトレーニングシーンがとにかく、アガる。前作クリードでも、これまでのロッキーシリーズでも、スランプを吹っ切り、ワイルドなトレーニングに一心不乱に打ち込むシーンが、もう理屈を超えて心を熱くするものなのだ。アドニスが全力疾走するところとか最高!あぁ、トレーニングがしたくなる!

◆ミレニアム世代が再度紡ぐストリートのストーリー

ライアンクーグラー、マイケルBジョーダンそして今作の監督スティーブン・ケイプルJRは、みなだいたい30歳、の、いわゆるミレニアム世代。 野心と才能ある若き、インディ映画出身の監督たちが、ロッキーシリーズを再度、ストリートのバイブス溢れるストーリーに語り直している。ここから、それぞれのキャリアが花開いていく、またいろいろな物語が紡がれていく、というウキウキ感、期待感がある。

ロッキーが、終盤、アドニスクリードに言う、「お前の時代だ」がグッ!とくるのは、映画の物語の中での意味に加えて、スタローンからクリード シリーズの演者、スタッフたちへの言葉とも受け取れるからだ! かつてスタローンが極貧の時代から、ロッキーで人生を変え、時代を築いたように、このクリードに関わる若き才能たちもまた、時代を築いていく!!

◆で、どうなんだこの作品

名作だった、クリード チャンプを継ぐ者。そして、続編の監督はライアンクーグラーではない。様々な期待と不安があっただろう。しかし、蓋を開けてみれば、ロッキーシリーズ、特にロッキー4を、また輝かせ、また、クリード シリーズの未来を明るく照らした良作に。なによりも、ドラゴ親子! これに尽きる。映画として、アドニスの物語にいまひとつパンチが足りない部分もあるが、ドラゴ親子の物語、そしえやっぱり最高なロッキーバルボアで、愛すべき作品なのは間違いない!

2019年、スタローン映画は大脱出2やランボー5など様々に控えている。スタローン愛を深める1年にしたい。

 

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映画、音楽、本のことを中心に、役に立つかどうか度外視して書きたいこと書こうと思っています。サブカルなイベントもよく行くので、そのレポートみたいなことも書くかもしれません。