気がつけば1月も終わりかけ。
観てきたよ。
へっこらよっこらしょと。
トーホーシネマズ日比谷で。
蜘蛛の巣を払う女、という映画をね!
◆スタッフ 基本的な情報
監督はドント ブリーズのフェア・アルバレス。脚本はスティーブン・ナイト。クレア・フォイ、スベリル・クドナソンらが出演。製作総指揮はデイビッド・フィンチャー。ミステリー小説「ミレニアム」の4作目の映画化。
◆あらすじ
悪い男に酷い目になっている女の人を助けるヴィジランテ活動をする、天才ハッカーのリスベット、通称、ドラゴンタトゥーの女。調子よく、冒頭、実業家のDV男へ世直しのジャステイスを食らわせる。
そんな中、ファイヤーウォールという各国の核兵器をラップトップからコントロールできてしまうというとんでもないプログラムがあるとやらで、その設計者からそれを米国のNSAから奪ってきてほしいと依頼を受ける。
ちゃちゃっとNSAをハッキングしてプログラムを手にするリスベットだが、NSAのファイヤーフォールの責任者のニーハムさんはあわてふためき、ハッキングされた先をトラッキングしてスウェーデンへ。
当のリスベットはプログラムを手にしてひと仕事終えたとゆっくり風呂に浸かっていたが、家の中に男たちが押しかけてきて、プログラム奪われ、家も全焼!
リスベットの頼みでドラゴンタトゥーという名前の名付け親でもある雑誌の記者のマイケルが調べたところ、盗んだのはスパイダーズという極悪組織で、どうやらまじクソ極悪でマジやばいらしい。しかも、その中心にはリスベットの生き別れた妹のカミラがいるとか?!
ファイヤーフォールを巡って、スウェーデン警察、リスベット、NSAのニーハムさん、スパイダーズ、それぞれの思惑が入り乱れ、運命が交わっていく….
◆潔いクライムアクション
賞レースで選ばれるような壮大であったり、哲学的な意味を持っていたり、社会派どうのこうのという映画ではない。しかし、クライムアクションのジャンル映画的楽しさを存分に発揮した仕上がりになっている。
デビッドフィンチャーが手がけ、ルーニーマーラー、ダニエルクレイグが出た、「ドラゴンタトゥーの女」よりも、潔くジャンル映画的で、個人的には、こっちのほうが好きだ。
エアポートノベルである「ミレニアム」が原作であることも考えると、映画的楽しさに忠実なこっちのほうが、そもそものスケールにふさわしいのかもしれない。
◆冒頭からかますジャステイス
まず、冒頭からクレア・フォイ演じるリスベットが、女に暴力をふるう最低野郎にかます世直しのジャステイス!鮮やかなリスベットの手際の良い世直し劇に、ググっと一気にひきこまれる。
最低野郎には、怒りの鉄拳、暴力!シンプルかつ、爽快。やっぱり、映画なんだから、最低野郎はぶっ飛ばされてほしいよ。
ここでもう、これは信頼できる映画だ、と安心して観ることができた。
◆ ヨーロッパの景観とクライムアクション
ストックホルムの街並みの中でのアクションシーンがこれまた見応えあり。ヨーロッパの味わい深い景観と、クライムアクションという組み合わせはそれだけでもう、映画的楽しさがすごくある。
マジックアワーのストックホルム、最高。雪景色がこれまたよい。黒でトータルコーディネートを統一したリスベットが黒光りするバイクで凍った湖の上をぶっ飛ばすシーンなど、とても良かった。
◆被虐の美
リスベット、被虐の美。
戦闘で傷を負ったりしても、むしろすればするほど、被虐の美ともいえる魅力をかもしだすクレア・フォイ。
予告編にもある、ラバースーツで掃除機で窒息させられそうになるところなんか、ノワール的残酷さも十分にある、THE 嫌な責め方。
そんなTHE嫌な責め方に対しての、苦しむ顔、キレ顔が、いちいちキマってる。ダークなテイストのクライムアクションの楽しさにおいて、キレ顔がキマっていることはとても重要だ!
◆ なんでフィンチャーは頓挫?
そもそも、なぜフィンチャー版での続編は頓挫しちゃったのか。2015年、ルーニーマーラー、クレイグらは出ないことを発表した。
今作、絵のライティングの感じとかはフィンチャーっぽかったりもするが、いい意味でのジャンル映画な楽しさは、フィンチャーでは出せなかったものだろう。
なんで頓挫したかはわからんが、結果的に、ドラゴンタトゥーの女はこれで良かったのだ!
◆マインドハンターのあいつ
フィンチャーといえば、Netflixのドラマ、マインドハンター。その中で、最強のサイコパスを演じた巨漢のあいつが、この映画に出ている。リスベットのハッキング戦法をサポートするテクニカル野郎の役だ。
Cameron Britton。192センチ 32歳。やはり、異様な存在感を放っていた。今後の活躍にも大いに期待したい。
◆ファイヤーフォール、こんなもんのためにみんなおかしくなっちまう。
「大奥 浮世風呂」(1977)で志賀勝が 「こんなもんのためにみんなおかしくなつちまう」と、皮肉たっぷりに、ちんこを放り投げるシーンがある。
まさに、この作品で出てくるファイヤーフォールというのは、「こんなもんのためにみんなおかしくなっちまう」ような、クレイジーなシステムだ。
各国の核兵器をラップトップPCでコントロールできてしまうチカラというのは途方も無い。太陽を盗んだ男の名ゼリフ、「9番目の核保有国、俺」どころではない。 ファイヤーフォールを手にすれば、「核保有国の核はみんな俺のもの」なのだから。
こんなもん実際にはありえないのは百も承知。これだけ清々しくヤバいシステムが登場するというのも、クライムアクションの盛り上がりをいい調子に高めている。
◆情弱は死ぬ
この映画、リスベットをはじめとし、出てくるひとほとんどみんなスマホやパソコンの使い回しっぷり、ハッキングスキルがやたらと長けている。まさに、ワイファイ社会のクライムアクション!
リスベットは、テクノロジーととんちをきかせてピンチを切り抜ける。悪党どもを蹴散らす。情報弱者は、即刻、死す!
リスベットは、自分に似合う黒のファッションのセンスいいし、バイクの運転スキルすごいし、キレ顔美しいし、ハッキングスキルもすごくて、本当、最高!好きです!
敵地に潜入する時はまずブレーカー落とすべし。よく気が回るリスベット。 電気とネットを制するものは、悪党まとめて皆殺し。
◆スパイダーズという極悪組織
この映画には、スパイダーズという極悪組織が登場する。
スパイダーズというと、GSのグループ、ムッシュかまやつ率いる ザ スパイダーズを思い浮かべるが、なんの関係もないのかな!?
悪い奴らは、ただひたすらに悪い。蜘蛛の毒を使ったりするし。変に悪者なりの哲学とか、正義とかない感じがいい。
リスベットに迫り来る、蜘蛛の巣。スパイダーズ!
◆赤いコート
そのスパイダーズのリーダーは、なんとリスベットの生き別れた妹、カミラ。
カミラはビビッドな赤いコートを着こなす。黒で統一した装いのリスベットとは対称的だ。
雪景色の中に赤いコートというのは、昨年観たミスミソウの野崎を彷彿とさせるものだ。雪景色と赤いコートの組み合わせ、いいね!
赤いコート、実戦での機能性は低そうだけど。
◆ リスベットとカミラ
サイコパスな父の下から逃げたリスベット。サイコパスな父のところに残り、自身も地獄のサイコパスに成り果てたカミラ。
リスベットは、もはや妹は死んだものだと思い、修羅の道を生きる非道な極悪組織のリーダーとして、カミラと対峙する。
このリスベットとカミラの関係には、人と人の誤解によるすれ違いのなんたるかが盛り込まれており、最後の後味はなんともいえず、ほろ苦い。ジャンル映画的に楽しい作品でありながら、ちょっと大人な苦さで〆るあたり、いいね!、という感じだ。
◆で、どうなのこの映画
リスベットかっこいい美しい!テクノロジーと頓知を駆使して悪のスパイダーズをぶっ飛ばせ! ストックホルムの景観も手伝って、画面は重厚で安っぽさは皆無。クライムアクションの楽しさを踏襲しながら、最後はほろ苦く〆る、ダークで楽しい娯楽作品。
まだまだ今年もたくさん映画を観るぞ!
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