日本でこれから公開する映画の、海外サイトのレビューを勝手に訳してみた 「魂のゆくえ」海外評価 (2019/4/12公開)

原文
https://www.theguardian.com/film/2018/jul/12/first-reformed-review-ethan-hawke-paul-schrader-amanda-seyfried

星 4/5

イーサンホークがポールシュレイダーのスピリチュアルなアポカリプスと向き合う—ホークがガン、アルコール、トラウマの記憶に苦しんだ聖職者を演じる。シュレイダーの容赦ないドラマで。

文:ピーター・ブラッドショウ(Peter Bradshaw)

●シュレイダーが脚本を手がけたスコセッシの1976年のクラシック、「タクシードライバー」との類似性は確実に意図的だ

ポールシュレイダーによるパワフルな新しいドラマ「魂のゆくえ」は、映画の形態でのシェーカー家具(Shaker furniture)である。スタークでいて簡素、厳格でセンスの良いインテリジェンスに基づいて美しく構築されている。それに座るのではなく、それを眺めることを想定して作られているが。

この映画は、マン オブ ゴッドについての映画で、そして、そのパーソナルでスピリチュアルな苦悩についてでもあり、世紀末的なクライマックスへと高まっていく。シュレーダーは今作を Pawel Pawlikowkiのオスカー受賞作「Ida」にインスパイアされていると語っている。しかし、私は今作はむしろ、イングマール・ベルイマンのWinter LightをTravis Bickleを主役にしてリメイクしたものに思える。

シュレイダーが脚本を手がけたスコセッシの1976年のクラシック、「タクシードライバー」との類似性は確実に意図的だ。胃がん、アルコール中毒に苦しんでいる聖職者が、ウィスキーにショッキングピンクのPepto Bismolを少量注ぎ、 ウイスキーの中に不快でどろっとしたなにかが広がっていくのを見つめるシーンは、おぞましく印象的だ。それは、タクシードライバーでトラビスがタクシー運転手としてニューヨークの汚れて犯罪に満ちたストリートを巡回する仕事の休憩中に、グラスの中で泡立つアルカセルツァーを近寄って見つめていたシーンととても似ている。

●彼は今 、夜な夜な激しく酒を飲み、テレビのない殺風景なアパートで終わりのない魂の暗闇の中にいる。放尿する際にはクソみたいな痛みが伴う。

「魂のゆくえ」における中心人物となる聖職者はアーネスト・トーラー牧師であり( 1939年に亡命中に自殺したドイツの劇作家を仄めかしている)揺るぎない信念を込めて、イーサン・ホークによって演じられている。彼はシリアスで、規律正しく、激しく自己批判的だ。彼は決して聖職者のドレスを脱がずいつも厳しい表情を浮かべている、彼の最初の聖餐式で施したと思われる、独特なヘアカットで。

彼は、シュレイダーと同じくプロテスタントであり、マルティン・ルターの「神はわがやぐら」についていくつかの強いジョークを飛ばしている。 罪の意識への没頭、トーラーの自身の美的イメージには、確実にカトリック的なものがあるけれども。

トーラーは軍隊と愛国心が伝統的に強い家庭で育ち、とても好感を持たれた聖職者だ。彼は自分の息子に、妻の反対を受けながらも、軍隊に志願するように推奨する。妻はもう彼を置いて去ってしまった。6ヶ月後、息子はイラクで戦死する。トーラーはその戦争を、本当に無益で馬鹿げたものだったと、今では考えている。

彼は今 、夜な夜な激しく酒を飲み、テレビのない殺風景なアパートで終わりのない魂の暗闇の中にいる。放尿する際にはクソみたいな痛みが伴う。しかし、小さいながらも献身的な彼の教会の集会では、いたってまともな様子を見せる。

トーラーは美しく伝統的な、ニューヨーク北部にあるFirst Reformed教会の牧師だ。しかし、その役職は一種の名誉職で、ツーリスト・アトラクションに似たものであるのは明らかだ。セドリック・カイル演じるジョエル・ジェファーズ牧師によって運営されるより巨大な教会の管理下にある。セドリック・カイルは スタンダップコメディアンとしてよりよく知られている俳優だ。

トーラーはかなりあけすけに不安の主体となっている。ジェファーズが実際的には、トーラーの牧師としてのケアの責任があるが、彼は不安である以上に、苛立っている。またトーラーは世俗のセラピーグループへ通うが、カトリックをナショナリズムと分離しようとする弱腰な試みは、彼自身を容赦のない極右の生徒からの攻撃に晒すことになる。

●この映画の徹底した厳格さは、グラス一杯の冷たい水のように、鮮烈で瑞々しい。

トーラーの苦悩の最終的な引き金となるのは、ある教区民からのリクエストだ。 その教区民の名はメアリー。アマンダ・セイフィールドによって演じられている。 彼女は、トーラーに、絶望の最中にある彼女のパートナーのマイケル(フィリップ・エッティンガー)と話してほしいとお願いする。

マイケルは平和的なプロテスト活動のために投獄された経験のある、環境活動家だ。彼は、メアリーがが妊娠しているという事実によって、危機の最中にある。彼らには、人間性が高慢さで失われてしまっているこの世の中に、子どもを送り出す権利があるだろうか?

マイケルの攻撃的な情熱がトーラーの中に眠っていたものを呼び起こす。それは、悪徳な環境破壊オイルカンパニーが、トーラーの教会のスポンサーであるということがわかり、更に高まっていく。

この映画の徹底した厳格さは、グラス一杯の冷たい水のように、鮮烈で瑞々しい。アレキサンダー・ダイナンによって撮影され、グレース・ユンによってデザインされた画面のその色合いはとても抑制されており、モノクロームに思えるほどだ。

シャープに嘘偽りなく無愛想な対話をクローズアップで映し出す抑制され、衒いのない構図が、厳しい調子で語られるナレーションと交互に展開していく。

それは、トーラーが数十年ぶりに自転車に乗る時に立ち現れる、痛切なまでにイノセントで、幼稚ですらある喜び、その感情の高まりの瞬間の感動を、より際立たせている。

●「魂のゆくえ」は情熱的かつ意欲的な映画だ。

そして、メアリーがある種の親密さをトーラーに求めて現れるシーンは、クラクラするほどに異常で幻覚的な印象を与える。そのシーンは、通常のリアリズムの重力を破壊してしまう。

「魂のゆくえ」は情熱的かつ意欲的な映画だ。しかしエンディングを確定させることのできていない不能において、欠点があり、マスターピースとは言えない。

そこにはいくばくかの不条理が感じられ、私はシュレイダーが締め切りに苦しめられていたのではないだろうか、と思う。しかし、それは、制作の獰猛さにはついて回るものであり、払う価値のある苦悩だ。

 

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映画、音楽、本のことを中心に、役に立つかどうか度外視して書きたいこと書こうと思っています。サブカルなイベントもよく行くので、そのレポートみたいなことも書くかもしれません。