日本でこれから公開の映画の海外レビュー 勝手に訳してみた: ポール・ダノ初監督作、ジェイク・ギレンホール、キャリー・マリガン主演 の映画、「ワイルドライフ」2019年 7月5日 公開

原文
https://www.google.co.jp/amp/s/amp.theguardian.com/film/2018/may/09/wildlife-review-paul-dano-carey-mulligan-jake-gyllenhaal

ポールダノ映画初監督として豊潤に描く小さな町の深い悲しみ

リチャード・フォードの小説を原作とし、1950年代のモンタナを舞台にしてキャリー・マリガンとジェイク・ギレンホール演じる夫婦の結婚生活の崩壊を描く、ポールダノの印象的な監督デビュー作。

文: Peter Bradshaw

◆ポールダノにとって監督としての鮮烈なデビュー作

この丁寧に作られ、入念に演じられているピリオド・ピクチャーは、ポールダノにとって監督としての鮮烈なデビュー作だ。プロダクションデザイナーのアキン・マッケンジー、質素でいて美しい第二次世界大戦後のアメリカンライフを映し出した撮影のディエゴ・ガルシアらの偉業も大きい。

脚本家であり俳優でもあるダノのパートナー、ゾーイ・カザンとともに、ダノは、1950年代にモンタナに両親とともに移住してきた10代の少年ジョーを主人公とするリチャード・フォードの小説を脚本化した。ジョーの家族は、中流階級の生活を背伸びして貧困ラインギリギリで送り、ペイチェックからペイチェックへ綱渡りし、やがて、ペイチェックが足りなくなる。

ジョーは落ち着きを失い怒りやすくなる。失業した父親は新たに山火事に対処する低所得の仕事に就く。それは結婚生活の終わりのシグナルであり、ジョーは母親であるジャネットの失望と、新たな人生への選択に踏み切る勇気を、近いところで目にすることになる。

ジャネットはジョーを大人のように、あるいは夫や親友のかわりのように扱い、ジョーは、後にライターのベティー・フリーダンが提唱するフェミニン ミスティーク(新しい女性の創造)を痛切なまでに認めていくことになる。

◆キャリーマリガン演じる母親は、官能的で反抗的な、若い女性へと、立ち返っていく

ジョー、そして我々観客は、ジャネットの中での段階的変化を目撃する。快活で尊敬されうる妻であり母親という、ジョーが家で見慣れているその様子から、官能的で反抗的な、ジョーの父親がかつて恋に落ちた若い女性へと、立ち返っていく。

しかし、彼女が、ユーモアがあって裕福な車のセールスマンや、妻に見放された退役軍人らを受け入れ、見定めはじめる時、すべては静かな絶望、カリカチュアの様相を呈していく。

◆ジェイク・ギレンホールは父親のジェリー・ブリンソンを演じ、永久的につかれやせ衰え、アメリカン・ドリーム、あるいはデール・カーネギーな成功の達成、社会的出世に失敗してしまったことに深く絶望している

ジェイク・ギレンホールは父親のジェリー・ブリンソンを演じ、永久的につかれやせ衰え、アメリカン・ドリーム、あるいはデール・カーネギーな成功の達成、社会的出世に失敗してしまったことに深く絶望している。彼は地方のゴルフコースのアシスタントとして働くも、期待されている相手との距離感を悲しいほどに間違えており、客が靴を履いている最中にその靴を磨き、場に調和しない快活なあいさつと恥ずかしいほどのこびへつらいを見せる。

エド・オクセンボウルド演じるジョーは無言でのリアクションのショットを多く要求される役柄だ。ジョーの無邪気な表情は、彼が、父親の羞恥と絶望、そして母親のジャネットの失望を推し量る時、悲しく抑圧され、歪んだまま固定される。

キャリー・マリガンはジョーの母親のジャネットを心からの喜びを込めて演じている。それは彼女のキャリアの中でベストな役、ベストなパフォーマンスのひとつだ。成熟、ウィット、物事に精通している様子、そして人生における感情的な戦いの傷を表現し、キャリー・マリガンがいつも自身を限定させていた少女的なイメージから、見事に脱却させている。

ジャネットはファイターであり、いつも明るく、決して諦めない、しかし、夫がその役割を果たす限り。ジャネットは颯爽と銀行不渡りとなったチェックの問題から遠ざかり、YMCAのスイミングインストラクターの仕事につき、ボーイフレンド候補として、非常に太ったビル・キャンプが演じる、ウォーレン・ミラーと知り合う。

ジェリーが映画から退場すると、ウォーレンはジャネットとジョーを家でのディナーに招待する。ジョーは大人同士が話している間に、ウォーレンのベッドルームに忍び込む。そこでジョーはウォーレンの脚の添え木がクローゼットにかけられているのを眺める。サイドテーブルの引き出しに見つけた避妊薬と同じくらい、それはジョーにとっておぞましく映る。

ウォーレンとジャネットの関係は規定のコースをたどる。学校に行きながら自分で食事も用意しなければいけないジョーは、この新たに分裂した家族での自分の役割はどんなものになるだろうかと思案する。

◆ポールダノは傷ついた人生のドラマで、私たちの心を満たしてくれる。

これはかなり見応えのある映画で、アメリカにある小さな町の飾らない生活模様を美しく、豊潤に描いている。感傷的で、自意識が過ぎる部分もあるが。

ジョーのキャラクターはそれ自体、問題があるように思える。ジョーが伝えるものは、言葉にならない絶望や、起きていることのすべてへの受容であり、それ以上でも以下でもない。

彼の顔はサイレントでクローズアップで撮影される。しかし映画は彼の感情へのアクセスを与えてくれない、ジェリーやジャネットにはあるそれのように。

とはいえ、ジョーは、ポートレイトの写真家のアシスタントとしてパートタイムで働き、ポールダノ監督は、そこに客として来る家族の胸を打つようなポートレイトを切り取ったスチールイメージを逐一提示してくれる。それは、マイク・リー監督の「秘密と嘘」や、ポールトーマスアンダーソン監督の「ザ・マスター」で用いられていたものと同様の、ブルジョワジーへの野望を示す効果。

ポールダノは傷ついた人生のドラマで、私たちの心を満たしてくれる。

★日本での公開

2019/7/5より、都内ではYEBISU GARDEN CINEMA、新宿武蔵野館で上映予定。 関東圏では、千葉 シネマイクスピアリ、神奈川 kino cinema 横浜みなとみらい でも上映予定。 埼玉のすべての映画館は今作をスルーした模様で、どこも上映する予定はない。

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https://mvtk.jp/Film/067490

新宿武蔵野館は、毎週水曜日、男性も女性も、老いも若いも、みんな1000円。

暑さでへろへろであろう梅雨明けの7月に、ポールダノが豊潤に描く、崩壊する家族、傷ついた人生のドラマを観て心を鎮めたいものだ。

人生はハード、グッドライフは絵に描いた餅、魂の救済は映画を観る行為の中に。

 

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