この話をレンタルビデオ屋におくとして、どのジャンルでおけばいいの?
って話が世の中にたくさんあると思うのですが、そんな話の一つをしようと思います。
何十年も前の話になるんですが、
僕は成人向け雑誌の編集部で働いていました。
当時のように早速成人向け雑誌なんて気取った言い方をしてしまいましたが、
ようはエロ漫画のことです。
エロ漫画の題名となるロゴの制作というのが主な業務で、
編集が持ってくるエロ漫画の原稿と、
その作品にマッチするロゴのイメージを書いた紙が、
デスクを埋め尽くしていました。
それはもう破滅的な光景が日常を占拠していたと思うんですよ。
毎日毎日、会社の屋上で繰り返される自問自答。
「なんで僕はここにいるんだろう」
マンガの編集を夢見て入った出版社は
夢から一番遠い場所だった。
ようするに仕事も、それをしている自分も好きになれなかった。
退職届を渡す前に、
発注書を渡される。
そんな日々が続いた。
ある日、人出が足りないということで、
マンガではない成人誌の編集の手伝いをすることになった。
そこで僕がアシスタントについた編集者が、
エキセントリックで歯に衣着せぬ女性だった。
彼女の指示は一つ一つが自信に充ち溢れていた。
女の子にニキビとかシワはいらないから、
誰だかわからなくなるくらい修正して
エロ本はファンタジーなんだから。
僕は誰だかわからない女性の写真をひたすら、
よりだれだかわからない女性に加工していった。
あらゆる指令にこたえた結果、
夜ご飯をごちそうしてもらえることになった。
薄暗い店内に入り、
メニューを決め、
一口水を含み、
彼女は僕に言った。
「私は心にち〇こを持っているの」
店員がオーダーをとりに来ても、
となりにカップルが座ろうとも、
どのようにして心に男性器を持つことができたか、
その過程を話し続けた。
春と夏と秋と冬が一気に去来した気分になった。
ようするに帰りたくなっていた。
立て続けに彼女は話し続けた。
「私は私のち〇こをたたせるような仕事がしたいの」
「いつか君にも、完全に勃起しているところみせてあげるから」
他人の名言はきれいごとだが、自分の宣言こそ本物の言葉。
彼女から感じた熱を前にして、
僕は僕のち〇こが委縮していくのを感じ、
次の日退職届を提出した。
もしこの話をレンタルビデオ屋に並べるのならば、池井戸潤原作の近くに並べてもらえることを切に願い、筆をとった次第であります。
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