22年ぶりの、男はつらいよ、の新作が控えている、2019年の年末。
大きなスクリーンで年の瀬に寅さんを拝めるというのは、有り難いものである。
そんなタイミングに、観ると味わい深い映画。
1968年公開、野村芳太郎監督による、白昼堂々、という映画だ。
北九州の小倉駅から電車でボタ山のほうへ行ったらある部落、そこを根城にする、渥美清演じるワタカツがリーダーの万引き部落集団が活躍する群像劇。
この映画の世界線では、渥美清と倍賞千恵子は兄妹ではなく、なんと、契約結婚する仲。倍賞千恵子は、麗しい見た目とテクニカルなスリの手口、時には色仕掛けも辞さないセクシーでリアリズムを体現するアウトローを演じている。
渥美清と倍賞千恵子が結婚ってなって、渥美清が性的に女として倍賞千恵子をとらえているのが、寅さんを当たり前のように知っている世界で生きる上でみると、どきりとする。
田中邦衛が、戦争のマーチ以外覚えてない記憶喪失の男として、セーラー服を着て暴れ回るという、インパクト大なバイプレイヤーズたちも目に楽しい。藤岡琢也と渥美清のバディ感も良かった。
スリ、万引き、といった犯罪を通じてつながる疑似家族的な集団と、それを追う警察、という構図で描かれる様子が、どこか牧歌的にも写るのは、犯罪手法がアナログゆえに被害の規模も知れてるのもあるし、あくまで生きるために盗んでいたり、渥美清をはじめとした犯罪集落の人々の人柄もでかい。
犯罪行為は決して褒められた行為ではない。集落のみんなを食わすためだ、とか正当化してるけど、いや、ちゃんと働けよ、って思う。しかし、ラストもあんま反省してない感じが、その反骨な感じが風通しよく痛快でもあったりする。
映画はアウトローを描いてなんぼ。
新しい男はつらいよも、楽しみだ。令和時代をぶち上げたい。
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