2021年 個人的にグッときた音楽 【国内】

1【butaji – トーチ】

折坂悠太との共作という事で2つのVerが存在し、

リリースのタイミングも同時ということで

彼らの間での特別の曲なのだろうかという思いが湧いてくる。

自分がこの曲に最も惹かれたのは歌詞に「お前」「私」がある事

何となく今まで聞いてきた歌詞はお前なら一人称は「俺」になってた気が

したからだ。「あなた、僕」「彼、彼女」人間を指しているが

butajiは何を「お前」と言い

何を「私」と捉えているのか

そんな事を考えてると曲は終盤唐突に16ビートに加速しカタルシスは最高潮に達する

2【LEX – MUSIC】

Mary Joy Recordingsから発表されたアルバム「LOGIC」のラストを飾る曲

まだ10代のラッパーであるLEXの魅力を特に感じたのは歌唱法と歌詞で、この2つの

最高点を叩き出してるのがこの曲だと思う(Soundcloudにアップされてる曲も必聴)

成功に向かってすでに走り出してる事に迷ってるかのような思いをストレートに歌い

独特の歌唱法で自分にスタイルを完全にものにしている

これからが楽しみなラッパーの一人だ

3【土岐麻子 – Rendez-vous in ’58 (sings with バカリズム)】

EPO作曲で「俺たちひょうきん族」のオマージュである本作は

土岐麻子とEPOの相性の良さ、そしてバカリズムというスパイスが

かなり良い味を出している

4【RUDEBWOY FACE – JAM DOWN】

長く進化していなかった日本のレゲエをネクストレベルに押し上げた記念碑的作品

ローファイなトラックにルーボイがJAMAICAで録ったコロナ禍の思いを

淡々と歌い上げている

アルバム制作は現地にいる日本人プロデューサーMEDZ MUSIC達と

「今までに無いものを」と決めて渡JAしたルーボイだったが、

ジャマイカのコロナ対策で一日遅れたら入国できなかったらしい

映像も同時に作る予定だったらしいが一日遅れた撮影クルーは入国できなかったため

より多くの時間を音楽に費やすことが出来るようになり今作が生まれたそうだ

5【Tohji, Loota & Brodinski – KUUGA】

初めてYodakaを聞いた時驚きを隠せずTwitterに殴り書きした、

見てみると同じような事をしてる人たちが何人もいた。

これは一体何だ?何がTohjiに起こってるんだ?

時間が経つと分かるが、これはLootaとBrodinskiとの共作であり

二人の影響がかなりあるのだろう、MVも正直常軌を逸している

宮沢賢治に準える人も多く、文学的とも捉えられる。

だが、何より凄いと思ったのはTohjiの発声法だ、

地獄の底から聞こえてくる助けの声にも思うし、

神の目線で疑問を投げかけてるようにも聞こえる何とも奇妙な快感がそこにはある

2021年の忘れ難い”体験”としか言いようがない

6【タケヤマカルメラ – ヘイ・ユウ・ブルース ~許せ、友よ~ (blackboard version)】

3.11の後にリリースされたShing02 & HUNGERの「革命はテレビには映らない」は

Gil Scott-HeronのRevolution Will Not Be Televisedのオマージュとしてアンセム化した

そして今回のコロナ禍では誰が?と期待していたらまさかのカンニング時代に発表した

左とん平の名曲のアップデートバージョン、

竹山自身の生活を赤裸々に歌詞に落とし込んでいる

言葉の弾丸という表現が似合うキレ芸の竹山のキャラにも合っている

この時代にしか生まれ得ない曲だと思うし、カバーセンスも見事だ

7【Otagiri – The Radiant】

ele-kingの記事で知ったOtagiri、初めて聞いた時イルリメを思い出した

だがこの人も歌唱法が独特でラップと言えるがポトリーディングとも言える

そして声質が良くリリックが耳にすごく入ってきやすい、それは中毒性の一種だ

8【桑田佳祐 – Soulコブラツイスト~魂の悶絶】

まずはメロディーが良くてかっこいい

「命懸けで今日も生きているんだよ」

桑田さんがそう言うだけで前向きに生きていける人たちがどれだけいるだろう

YouTubeのコメントを一つ、その通りだと思う

“どの年代の人が聞いても、胸に刺さる”

9【DE DE MOUSE & TANUKI & 一十三十一 – Neon Lightの夜】

10代からレゲエが好きな自分が音楽で思考が変わるほどの衝撃を受ける事は

しばらくなかったのが、2013年にSaint PepsiがリリースしたHit Vibes、

それ以前のVaporwaveにはかなり音楽感を一新された、

その後Future Funkへと流れができAmbient、New Age、現在のCity Popブームへと繋がる

そこでDE DE MOUSEが起こした行動が「現行のFuture Funkを作る」というもの

その気合いが音からかなり伝わる仕上がりになっていて、

良いものを廃れさせない音楽愛も感じられる素晴らしい楽曲である

10【FRISCO – Vocals】

これは1曲目のスピナビルとのSho’ Nuff に尽きる、スピナは去年フルアルバムを出し、

日本のレゲエバンドで最もライブをこなしているHOME GROWNに

やっと自分たちがやりたかった音楽と出会えたと言わしめた存在。

今回はタイトルが「VOCAL」であり歌に焦点を置いている。

レゲエの歌い方ではなくソウル寄りの歌唱法でCarlton & The Shoesの

Give Me Little Moreのリズムを下敷きにSly Slick & Wickedの曲をカバーしている。

改めてスピナの歌の上手さに気付かされる

11【MISIA – HELLO LOVE】

2021年の年末にリリースされたフルアルバム、

先行シングルのHiger Loveは作詞作曲が藤井風

素晴らしい愛の讃歌であり、全ての人を幸せにする曲だと思う藤井風恐るべし。

だが個人的には1曲目のWelcome Oneを推したい。

ライナーノーツにもOPに相応しい曲とあり、明るくノリの良いダンサブルナンバーだ

MISIAに歌唱法など釈迦に説法なのだが、

とにかく恐ろしく表現力が高くて何度聞いても飽きない

メロディーも最高でサルソウルレーベルDouble ExposureのEverymanを彷彿させる

12【HIROSHI WATANABE – TAKACHIHO】

デジタルリリースは2020年だがフィジカル盤は今年だったので購入

「Kagura」にやられまくった、先ずは音の良さ、イントロの大太鼓、民謡のメロディー、

3分頃のブレイクから一気に音像が開けて

古いものと新しいものの融合の瞬間が心地良すぎた

こういう事はもしかしたらテクノの特質性なのかもしれない

13【Ryoji Ikeda – superposition】

2012年から世界各地で上演を続けている池田亮司のパフォーマンス作品が

今年まとめられリリースされた。

池田と言えばクリック音、現代美術、エレクトロニカに

無理に属する事もできるような音楽を作り続けていて世界の評価が高いイメージだ

今作で久々にフルを聞いたのだが自分には最近あまり出会えてない

素晴らしいDeep Houseのように聞こえて興奮した

特に「scene 3 | part 3–6」を聞いてみてほしい

14【Reggae Disco Rockers – The Whistle Song EP】

自分はダンスミュージックで最も好きな曲の1つが

フランキーナックルズのホイッスルソングだ

この曲は気分を上げたい時、リラックスしたい時、寂しい時、

いつも寄り添ってくれた大事な曲で彼の訃報を聞いた時はショックだった。

それが今年Reggae Disco Rockersがカバーすると聞いてすごく喜んだ、

聴く前から良いのが分かっているというのは気分が良くなる。

全年齢、全方位対応のレートは五つ星間違いなし

15【PSG & Original Love – I WISH / 愛してます】

オリジナルラブの楽曲カバー集より

元々2010年にPSGとしてアルバムをリリースし

そこでI Wishをサンプリングしてた曲があった

田島貴男の歌が入ってくるまではほぼ原曲通りの構成だが

そこからの展開に目を見開いた

PSGのアルバム「DAVID」はほぼPUNPEEのソロ作品で

この曲も彼のセンスによるところだが

とうとう想像上の絵が現実になった瞬間だったんじゃないかと思う

16【V.A. – HEISEI NO OTO】

一昨年のグラミー賞ノミネート作品「KANKYO ONGAKU: JAPANESE AMBIENT ENVIRONMENTAL & NEW AGE MUSIC 1980-90」がリリースされた時は驚いた

そして今回はNew Ageのコンピである、もうこの手のジャンルは日本のお家芸だ

自国の発掘音源のコンピが海外のディガーがコンパイルする事は今までにもあり

日本のNEW WAVEやアングラロック、フォークなど様々だ

でも何故外の人が先にやってしまうのか、

悔しくないのだろうか、

俺は辛酸を舐める思いだ

17【COLDFEET – (Just) Don’t Stop The Music feat. Mika Nakashima】

J-WAVE(ラジオ局)で毎日夜中3時から5時まで放送してる

TOKYO MAAD SPINという番組がある

そこの月曜ナビゲーターがCOLDFEETのWatusiとDJのNazで、

毎回音楽家だけではなく政治家や活動家などもゲストに呼んで

ちょうどコロナに突入する時期に番組が新しくなった

Watusiは自身のキャリアと幅広い知識で

日本のクラブミュージックに関係する人達とのコネクションがすごく広く

毎回多彩な顔ぶれの滅多に聞けない話が聞ける番組だ

他の曜日(特に火曜日の高木完)も加えて素晴らしいものになっている

この曲はコロナ禍に無料DLで提供された何とも贅沢なハウスミュージックだ

18【キリンジ – crepuscular】

これはアルバムを通して聞くべきだと思う、スルメ曲がたくさん詰まってる

正直キリンジをしっかりと聞いたことが無く何となくオシャレなポップスやってるのかな

と思っていた、大体はあってるが制作がコロナ禍という事もあり歌詞にも興味が出た

1曲目「ただの風邪」から「再開」「first call」の流れは10回連続でも聴ける

注目すべきはここ最近良く目にする角銅真実氏がマリンバで参加したインスト

「ブロッコロロマネスコ」とりあえず聞いてみてはいかがでしょうか。

個人的には全体的な匂いと音像が木下美紗都の「それからの子供」に似てるなと感じる

19【どんぐりず – 4EP1 & 2】

群馬から世界を狙う若いラッパーの勢いを感じるEP

Disclosureのベースラインの気持ちよさがありそこにラップが踊るように乗っかる

2020年の「マインド魂」で知ったがそこから後追いで聴ける音源は全部聞いた

最近YouTubeの番組「オタク in tha hood」で彼らのヤサを見ることが出来る

20【アイナ・ジ・エンド – 彼と私の本棚】

元BiSHのメンバーという情報のみで聞いてみたところ歌い方にかなりやられた

この人の歌唱法も独特で自分を全て曝け出すような歌い方、でもがなるとは違う

正直アルバムはあまりにも普通で完全に名前負けしてるのだがこの曲は良かった

2021年 個人的にグッときた音楽 【海外】

1【Tyler, The Creator – SWEET / I THOUGHT YOU WANTED TO DANCE】

アルバム「CALL ME IF YOU GET LOST」より

10分に及ぶ曲はバックトラックが目まぐるしく変わり、その中でも

4’45”あたりから唐突に挿入されるレゲエのサンプリングには凄まじいセンスを感じた

タイラーはグラミー賞でこのアルバム、前作もHIP HOP部門で評価されたわけだが

本人はPOP部門でと主張しているらしい、聞けば分かるが万人が必ず良いと思える

楽曲が1つは入っているのだからその葛藤は正しいと思う

2【Floating Points, Pharoah Sanders & The London Symphony Orchestra – Promises】

JAZZ界の巨匠サンダースと電子音楽界の鬼才がタッグを組んだ

今作はまるで底なし沼のようだ。何故なら聴くたびに印象が変わるし

明確なフレーズというものが存在せずただ鳴っているからだ

スーパーやデパートのミュージックとも違うし

家具のような音楽として無視する事も不可能だ

ファラオ・サンダースはジョン・コルトレーンに師事しカルテットを組み

彼の死後は何枚もソロアルバムを発表してきた。

その中でも「Karma」というアルバムは個人的に強く衝撃を受けた

音楽とは一体何なのかという疑問を抱くきっかけになった作品でもある

一方Floating Pointsは09年の「Vacuum EP」で初めて聞き、テクノとハウスの中間、

当時流行っていたミニマルとニューディスコ文脈で解釈していたが

今聞くと完璧なDEEP HOUSEだと気付く。

両者に共通するものは音楽への愛情と実験精神だ、それがコロナ禍の中で見事に融合し

両者の代表的な作品の一つとなっている事は間違いないだろう

3【Sam Gendel – Fresh Bread】

2012年から2020年の間に自宅で録音された秘蔵音源52曲が収録された大作

Sam Gendelは細野晴臣のラジオでも今年のトピックに挙げられており

様々なアーテイストがラブコールを惜しまない

近作では秩父のギタリスト笹久保伸との共作まであり今最も脂の乗ったアーティストの一人だろう

4【Third Son – Your Face as Art】

ロンドンのプロデューサーであるThird Sonの仕事ぶりは去年に引き続き素晴らしい

多作でありながら常にスタイルを変え追求し想像を超えてくる

近年の作品は全て必聴で、discogsや本人のSNSでもきちんとまとめられていないのが勿体ない

5【Gombeen & Doygen – D’Americana / Auto-Lies】

アイルランドのアンダーグラウンドから出現してきたアーテイスト

もちろん初めて聞いたがドラム&ベースの音色が何とも魅力的で

すぐにベーシックチャンネルを思い浮かぶだろうがそれプラス近年の

ベースミュージックの要素も加わりかなりエッジの効いたNEW WAVEとして聴ける

この曲が一番今年らしいなとも思った

6【MAD REY – B.R.O】

5曲入りのEPだがOmar-SのRemixが入ってたので聞いてみたところまるでD.A.Fを聴いてる錯覚に

陥ってしまうほどのハンマー要素が強く、さらにメロディアス

7【The Pop Group – Y in Dub】

ポップグループが79年にリリースした1stアルバム『Y 』のプロデューサーである

デニスボーヴェルによるダブアルバムが新譜としてリリースされた

これは往年のファンとしては事件としか言いようがない

言うまでもなくShe Is Beyond Good And EvilのDUBは超ダンサブルでかっこいい

「Y」の時のメンバーがまだ10代というのは

現代に生きる我々にとってどう考えるべきなんだろう

石野卓球の一連のツイートにも感動する

8【Loft – Wish It Would Rain】

Loftことアヤ・シンクレアは今年HyperdubからAya名義で

とてつもないアルバムをリリースしている。

自分はとしての彼女を長年聞いてきたのでこちらに手を挙げたいのだが、

このEPが素晴らしくエモいのだ、「雨降って!」との事だがアートワークも含めて

リリース時期の初夏、黄昏時の夕立に想いを馳せてしまう

9【Yu Su – Yellow River Blue】

一昨年のEPはMUSIC FROM MEMORY傘下のダンスミュージックレーベル

Second Circleからリリースされその存在感を見せつけたユースーだが

今年待望のフルレングスを発表

エキゾチックな雰囲気の音像に浮遊館漂うシンセポップは

昨今のNew Ageリバイバルにも通じるところがあり

約束された成功に近いものがある、ぜひYaejiやYONYONなどとコラボをしてほしい

10【Sun Rhythms – First Touches EP】

とにかく1曲目のBetter To Loveに尽きる

今年のアンセムとして挙げても良いくらいの素晴らしいニューディスコで

ブームだった2010年あたりの雰囲気を真空パックしたような出来で

ワクワクしながらクラブへ通っていた時代を思い出す

11【Lowtec – Easy To Heal Cuts】

ベテランプロデューサーの新作は何も迷いが無い

この音こそ全てと訴えられてるような気すら思えてきて

リスナーとしても安心して聞いたり購入できるのではないだろうか

ちなみに私が最も好きなレーベルの一つとして「WORKSHOP」があるが

Lowtecはカタログ1番を担当している

12【Call Super – Cherry Drops II】

ミュージシャンズミュージシャンのイメージが強い実力者Call SuperのEPより

たまたま深夜ラジオでかかっていてどハマりした

ここ2年ほど爆音で音楽を聞いていないのでこの曲を大きなサウンドシステムで浴びたい

13【Quantic – Heaven Or Hell】

大人気のクアンティックの新作はラテンのリズムを使ったハウスミュージックで

文句の付け所が全く無いほどに完璧な音だ

「Mala in Cuba」のような金字塔を打ち立てるのもすぐそこだろう

14【Sofia Kourtesis – Fresia Magdalena】

ソフィア・クルテシスは1984年生まれのペルー出身で

ベルリンを拠点とするハウスプロデューサーだ

3枚目となる今作は前2作でのStudio Barnhusカラーを出しつつも、

絶大な人気を誇るFour TetやCaribouなどの音像に近いものを取り入れ

オリジナルな柔らかなテクノを奏でている

1曲目からリスナーはその音の虜になるに違いない実力者

15【Howie Lee – Birdy Island】

北京のプロデューサーによる鳥と祖先の霊が共存する

架空の島をコンセプトに制作されたアルバム

様々なアーティストの作品を聞いてくると

ジャケ買いやタイトル買いなどの感覚が身についてくる

自分は”Island”が入ったアルバム名は長くなければ

大抵耳に引っかかる経験があり今作もしっかり当てはまってくれた

16【Joaquin Joe Claussell – Way Back Then】

アルバム「Raw Tones」より

1曲目のLock Downからコロナ禍でのクリエイトだったのだと思うからか

全体的にダンスよりではなく浮遊感漂うAmbient Houseと言った印象だ

個人的にベストトラックであるWay Back ThenはJoeらしいコード進行に加え

スピリチュアルなシンセのループと美しいピアノの音色に心地よさが溢れている

17【Unknown Artist – Community Arts Project】

著名なアーティストの変名だと思われるが「団結」をテーマに4曲収録

1曲目は「さあ革命の話をしよう」と言われてるようなビートダウンで

途中政治家のような人物に演説がサンプリングされている

18【SRIRAJAH SOUND SYSTEM – SI PHAN DON LOVERS ROCK】

タイのサウンドシステムが放つモーラムラヴァーズロック

ジャマイカやUK、日本のレゲエとも違う何とも言えないゆるさがあり

自然に身体が動き出してしまう

ちなみにモーラムとは日本で言うと演歌のようなもので土着的要素があり

各国のオリジナルサウンドはラヴァーズロックとの相性が良い事が分かる

19【Disclosure – DJ Kicks】

今作は唯一のDJ MIX作品、Disclosureはデビューしてからメジャーまでの期間

素晴らしい作品を連発していたがメジャーになると良さの大部分が失われていたので

大いに失望していたのだが近年は以前のスタイルに戻りつつある

彼らの特徴的なベースラインをこのMIXでは存分に堪能できる

EPでいいので画期的作品を聞きたい

20【Damian “Jr Gong” Marley – Life Is A Circle】

最後はボブマーリーの息子ダミアンの神への賛歌

「人生は周り回って元に戻る、嫌なことも良いこともあるけど

前向きにの乗り切ろう」

Jamaicaはキリスト教徒が多く、伝統的にハードコアなDeeJaeであろうが、

シンガー、シングジェイ、レジェンド、ラスタ、ありとあらゆるレゲエの関係者が

神への賛歌、人生についての歌を歌う

この曲はストレートな歌詞も良いがトラック、歌声、ベストマッチだと思う

Apple Musicで聴きたいミスチルのおすすめ10曲

先日、ついにApple Musicでミスチルの楽曲の全曲配信が始まった。

邦楽で売れているメジャーなバンドや歌手やアイドルは定額配信サービスを無視し続けてきた。必要がなかったのかもしれない。

しかし、やはり定額配信の大きな流れには乗っておくと良いことも多いぞ、ということを認識したためか、徐々にメジャーな人らの定額配信も増えてきている。

ミスチルはでかい。好きにしろ嫌いにしろ、意識せざるをえないでかさがある。

メガヒットしている有名な曲もたくさんあるが、そのへんは避けつつ、この配信のタイミングであらためて聴きたい、再評価したい、ミスチルの名曲を10曲選んだ。

1 ありふれたLove Story〜男女問題はいつも面倒だ〜

「深海」というアルバムに入っている1曲。 ラブソングを俯瞰で捉えた、自己批判的な曲。
映画「ブルーバレンタイン」にも描かれたような男女の出会いから盛り上がり、そして冷め切っていくまでのストーリーがブルージーに歌いあげられる。

愛は消えたりしない 愛に勝るもんはない なんて流行歌の戦略か そんじゃなに信じりゃいい 明日へ向かえなんていい気なもんだ

っていうこの歌の中の言葉は、自身の楽曲にも向けられているのだろう。

それを重々にわかったうえで飲み込んだ上でのラブソングを歌い続けるミスチルの業の深さに感服。

2 LOVEはじめました

It’s a wonderful worldというアルバムの中の1曲。これもまた、自己批判的な曲。「LOVE」というのは、「ポップス」ということだと解釈できる。 さぁさぁ、みなさんお待ちかね、「ポップス」鳴らしていきますよ、と半ば自虐的に歌った曲。

相変わらずだねって 昔付き合ってた女にそういわれた よくとっていい意味なのか悪い意味なのかわからずしばらくヘラヘラ笑ってた

って歌詞、これ、俺のことだよ!って思うボンクラも多いのでは。

聴き手に「自分だけがわかることを歌っている」と勘違いさせるのがまさにミスチルがポップスの巨人たる所以。

3 雨のち晴れ
https://www.youtube.com/watch?v=w5tWZiz_j0I
Atomic Heart というアルバムに入っている1曲。ユニコーンの「働く男」や「ヒゲとボイン」を彷彿とさせる、中流サラリーマンの苦悩、悲哀を歌った曲。26歳くらいの時に聴いて、うっ!となった曲だが、30になり改めて聴くと、より一層、うっ!となる恐ろしい曲。

4 羊、吠える

SUPERMARKET FANTASYというアルバムに入っている1曲。

なんだか達観していて甲斐性のないだらっとしているボンクラの歌。人生など、いいこと49、やなこと51くらいの比率でっせ、という。

桜井和寿は全能な男だが、そうではない人間の描写が天才的にうまい。ミニマルな悩みを大きなスケールの人たちに届ける達人である桜井和寿の技を味わえるナンバー。

5 Mr. shining moon
https://www.youtube.com/watch?v=H1fAtNPpn-A
デビューアルバムのEVERYTHINGに入っている曲。90年代初頭の渋谷系のトレンドも汲んだと思われる軽妙なソフトロック。今のミスチルとのスタイルの違いを感じさせながらも、バンドのルーツが息づいている佳曲。

6 メインストリートへ行こう
https://www.youtube.com/watch?v=mtDr1Q53AaM
ミスチルの2枚目のアルバムVERSUSの中の1曲。あまりにもエルビス・コステロ。これは自覚的にやっているのだと思う。そこがまたよかったりする。

7 Marshmallow day

すごくポップ。2012年に出た (an imitation) blood orangeというアルバムに入っている1曲。

好きなひとに会いにいくまでが一番盛り上がる、遠足の準備が一番楽しい的な歌。愛人、不倫の刹那な交友関係を思わせる官能的な歌詞でありながら、メロディが突き抜けてポップなのがよい。

腹上死の白昼夢、退屈な日からの逃避。

8 靴ひも
https://www.youtube.com/watch?v=XbNGO70Fi_M
2005年リリースのアルバムに入っている1曲。イントロはスマッシング・パンプキンズの「1979」の引用的フレーズ。

会いにいくか行かないか迷って、結局会いに行く。なんとなく匂わせている背徳感。 靴ひも結ばずに、格好つけてる暇なく、あっち側に溺れていくという歌。

9 I can make it
https://www.youtube.com/watch?v=Mb4qrSeoFwU
2015年にリリースのアルバムReflectionsの中の1曲。

こういう曲に見え隠れするミスチルのドロッとしたところ。仕事に追われてもう締め切り間に合わねぇよ死にたい、って気持ちの歌。

ソリッドな演奏にロックバンドとしての体力も感じさせる。

歌詞にある、「全編を通し暗いタッチで描かれたモノクロの映画」っていうのが気になる。

10 ROLLING ROLLING 一見は百聞にしかず

これも、アルバムReflectionsの中の曲。「いいかい、そこのご両人!」とシャウトし、人生は理不尽なものですよ、と綺麗事をはぎとっていく。中流のやさ男がまじめに生きていても親友に寝取られ女房に逃げられという顛末はよくある話なんだぜ、という夢も希望もないことをまくしたてられる。

これもまた自己批判的な曲。定期的に自己批判的な曲を歌うことで、バンドとしての精神衛生を維持しているような気がする。

ポップスを体現するのは大変だ。

以上、ミスチルのApple Musicで聴きたい10曲。

Apple Musicで聴きまくってほしい。

「3776を聴かない理由があるとすれば」その素晴らしさについての感想

先日、掟ポルシェのツイートで知った。3776というアイドルによる「3776を聴かない理由があるとすれば」という作品。7/28に作品の再現ライブがある、と。

どんなもんかと思い、動画サイトで聴いてみた。すると、いままで全く知らなかったのが悔やまれる。自分のアンテナが拾えていなかったのに怒りわくほど良い。その日の帰りにCDを買って帰った。アナログ盤欲しかったが、もう売り切れているようだった。

3776についてちょっと調べてみると、いわゆる「楽曲派」アイドルであり、「富士山ローカルアイドル」として活動している、「井出ちよの」のソロプロジェクト、だそうだ。

この「3776を聴かない理由があるとすれば」は205年リリースのコンセプトアルバムであり、アルバムのトータル時間3776秒で、井出ちよのがナビゲーターとなり1秒1メートルずつ登り3776メートルの富士山登頂を目指す、というものらしい。

このアルバム、とにかく、中毒性がある。
オルタナ魂を感じる。

オープニング、「スタート!」という井出ちよのの合図から、アンビエントなイントロでその世界へと引き込まれていく。

ニューウエーブ感のあるソリッドなサウンドに、井出ちよの(当時14歳)の、まだあどけなさが残りながらもアイドルとして技巧的でそして肝の据わった歌声が乗る。そこから醸し出される狂気。

アルバム通して聴いて素晴らしいコンセプトアルバム。

曲単位で言うと、「避難計画と防災グッズ」の、地震速報が鳴った時のハッと非日常が浸入する感じを再現したイントロから多彩な歌い方、展開の妙、どこか不穏なコード感による「食えない曲」感が凄まじく何度も聴いてしまう。続く「日本全国どこでも富士山」も、全国の富士と名がつく山を紹介していくというテーマの曲だが、そのよくなぜそんな紹介をしているのかわからない感じとポップでありながらどこか醒めていてソリッドな電子音のビートがあわさり中毒性やばい。

作曲を全て手がけるプロデューサーAkira Ishida。誰だ。

記事あった。
https://ototoy.jp/feature/20151025
https://ototoy.jp/feature/2016100508

遅ればせながら世間が追いついた天才といったところか。

アイドルだから聞かないとか、アイドルだから聞くとか、そういう次元のことではなくて、楽曲として優れているし、もう名盤。

再現ライブ、行こうかな。

小沢健二の武道館ライブ「春の空気に虹をかけ」に行ってきた感想。

2018年5月3日、小沢健二の武道館ライブ「春の空気に虹をかけ」に行ってきた。感無量、素晴らしい体験だった。

最初から最後まで当然のように出ずっぱりの満島ひかりを含む36人編成ファンク交響楽が生みだすグルーヴと、新旧多様な楽曲を我が歌のごとく熱唱するオーディエンスの熱気とあわさり、会場には異様なハイな空気が充満していた。

小沢健二の言葉は強い。今回のライブでも、小沢健二は、観客に「一緒に歌うこと」を求めた。それは小沢健二の楽曲の歌詞が歌詞である以上に力強い詩であるからなのだと思っている。歌詞カードなど見なくても多くの観客が歌っていた。それは90年代の「懐メロ」だからではない。最近の曲でさえ、そうだったのだから。

ライブの中でも、「ある光」から「流動体について」の流れは本当に秀逸だった。小沢健二が日本の世間から消えてしまった時の歌である「ある光」、そして、帰ってきた時の歌である「流動体について」。その時々の心情が赤裸々すぎるほどに込められた二曲が歌われるときに立ち上がる物語、18年間の豊かな「空白」を経て紡がれるそのダイナミズムに、感動を抑えられなかった。

「コミュニケーションの根幹は沈黙である」と吉本隆明は言った。29歳で日本の世間から姿を消し、18年後に戻ってきた小沢健二。その沈黙の間、彼の中で積み重ねられた思考、その芳醇なコミュニケーションの蓄積が、90年代の代表曲にも最近の曲にも深みを与え、エネルギーを爆発させていた。

昨年リリースした、「フクロウの声が聞こえる」という曲。本編でも、まさかのダブルアンコールでも演奏していた。

芽生えることと朽ちること
真空管を燃やすギターの音
残酷さと慈悲が一緒にある世界へ
ベーコンとイチゴジャムが一緒にある世界へ

ここのバースを、何度も繰り返し、なんだかすごいグルーヴが生み出されていた。まさに、日常の裂け目(スリット)にあらわれた非日常がそこにあった。

本編の最初と最後を挟み込むように演奏された曲が「アルペジオ」だった。岡崎京子原作の映画「リバーズ・エッジ」の主題歌になっている曲。その中で、「僕ら」と歌われる時、それは小沢健二と満島ひかりと36人編成ファンク交響楽であるし、また、彼らとオーディエンスであるし、そして、どうしても、岡崎京子のことを意識せざるを得なかった。あまりにも赤裸々で個人的で普遍的な歌。

最後に小沢健二は「そして、生活に戻ろう」と言って幕を閉じた。日常の裂け目から一瞬だけ顔をみせる非日常、裂け目としてのライブ空間。ライブで熱狂したオーディエンスも、ライブが終われば何事もなかったかのように散らばり、大衆の中に溶けていく。生活に戻る。あっさりと。

しかし、小沢健二は伝えている、日常にこそ、生活の中にこそ、大切なことがたくさんある、と。ベーコンとイチゴジャムが一緒にある世界へと進み、その世界を生きる生活の中に。

小沢健二の言葉は、まるで危険思想のように人々に埋め込まれて、日常の行動を変えていく。「意志は言葉を変え、言葉は都市を変えていく」。日常の、裂け目に現れた非日常のライブ空間での熱狂、そこから日常に戻り、大衆にまきこまれ、それで何事もなかったように変わらぬ日常が続いていく、わけではない。それぞれの日常での意識的、無意識的での行動の変化が、都市を変えていく。

「意志は言葉を変え、言葉は都市を変えていく」、躍動する流動体そのもののようなライブであり、体験だった。

国府達矢というミュージシャン

2018年4月20日、新代田feverというライヴハウスで「ロックブッダ」リリース記念イベントに行ってきました。

国府達矢は最近知ったばかりだったのですが、新譜「ロックブッダ」を聞いた時に「お!」「おお!」「おおお!」「おおおお!!」と北斗の拳(スロット)の宿命から闘神ステージまで一気に駆け上がるほどの興奮を覚え、周りの友達たちに「死んでも聞いた方がいい」と勧めまくってた所のタイミングでのライブでした。

19:00前座がスタート

国府達矢登場が21:22

前作が2003年、15年間引きこもっていたからか照明を眩しそうにしながら、いやしかしそれが逆に神々しくまさに「ロックブッダ」

相当な練習を積まれて来たと思われるステージング。

途中、僕は拳を上げ続けているとそれに答えてくれました。

そして振り返りお客さんを見回すと、まるで尊師の登場に喜びを隠しきれない恍惚とした表情が!

まさしくこの通りに後半に連れノリに乗っていき、空間を支配してました。

山本精一×A×S×E×向井秀徳

この三人の天才ギタリストを足して割ったような、などという陳腐な意見しか出ませんが、一聴の価値はあると思います。

てか聞け!

あなたに出会っていなければいまの私はいない。 ありがとう、ロッキンオンジャパン2003年9月号。

今から15年前、中学3年生の夏、ACIDMANが表紙のロッキンオンジャパン2003年9月号を購入した。修学旅行が終わり、ちょっと休みがあって、歯医者に行って、その帰りだったと思う。なぜ購入したのかというと、その中には、ロッキンオンジャパンフェス特集の小冊子が付いており、その小冊子の表紙がバンプオブチキンだったからだ。バンプオブチキンは好きだった。天体観測という曲がドラマで使われていたので知っていた。15年前の田舎の中学生にとって、テレビで流れていること、音楽番組のオリコンランキングでランクインしていることが、新しい音楽を知る主な手段だった。

 

「ロックフェス」というものの存在をそこではじめて知った。そもそも、ライブハウスはおろか、ミュージシャンのコンサートにすら行ったことがなかった自分にとって、ロックフェスという1日中野外でロックバンドが演奏しているというイベントはいかなるものか想像がつかなかった。そのフェス特集の小冊子は衝撃的だった。9割が知らないバンドやミュージシャンだった。奥田民生やスガシカオやリップスライムなど、テレビにも出ているから知っている顔もあったが、知らない顔がほとんどだった。知っている顔の人たちと、知らない顔の人たちが同じステージやバックヤードで仲良くしている写真はなんだかとても不思議で大人の世界の光景だった。そこに知らない世界が広がっていた。

 

フェス冊子を読んで、知らないけど、なんかよさそうな気になるミュージシャンやバンドの名前をメモにとり、地元のツタヤ、ゲオに行った。ほとんどなかった。ゲオの中古販売コーナーがあったので、そこでもないか探した。そこでようやく見つけたキリンジの「For Beautiful Human Life」というアルバム。中古で900円くらいだったと思う。冊子で見て写真と文章だけで知っていたキリンジってグループのやつがやっとあった!という喜び、運命的な出会いも感じ、何度も聴いた。すごく大人なアルバムで、背伸びしてる感が半端なかった。

 

その後も、雑誌、主にロッキンオンジャパンとその系列の雑誌を読んで知らない単語、名前をメモして、レンタル屋やCD屋に行って音楽の世界を切り開いていった。ロッキンオンジャパンはその後、自然と買わなくなっていったが、10代の頃、だいぶ世話になった。ディスクレビューで知り、聴くに至った作品は数知れず。ハガキも送った。投稿が掲載され、口ロロというヒップホップユニットのTシャツやYO-KINGのサイン入りのTシャツなど当たって嬉しかった。

 

「ロキノン系」と言われるバンドに関しては、聴いて好きなものも、良さがわからないものもある。ロッキンオンジャパンを10代に読んで過ごした自分が「ロキノン系」の趣味を持っているのかどうかはわからない。しかし、2003年9月号のフェス特集小冊子がサブカル的な方向へと音楽を探索していくきっかけとなったことは確かだ。岡村靖幸もThe ピーズもキリンジもそこで知った。そういう意味で、私は「ロキノン系」なのだろう。

 

20代になってからは、ロッキンオンジャパンは読まなくなった。フックアップされる新しいバンドにノレなくなってきた気分もあったが(andymoriとかは好きだったけど)、スマホを使いだし、Twitterを使いだしたのが大きい。音楽情報を集める手段が変わった。ネットにないようなコアな情報は、もっとロキノンよりコアな別の雑誌を読んで集めた。ナタリーのようなサイトの普及もロキノン離れに拍車をかけた。

 

昨今はSpotifyやApple Musicで無限に様々な世界中の音楽をきくことができる。いまの田舎の中高生が羨ましい。きっかけさえあれば、田舎にいても新しい世界に触れ世界を広げていくことができるのだ。

それでも、自分のすごしたあの中高時代はかけがえのないものだったと思う。あの頃はよかったというただのノスタルジーかもしれない。しかし音楽は、どうそれに出会うかも重要だと思っている。

 

Spotifyの便利さも享受しつつ、ついつい運命的ななにかを求めて本屋に行ったりレコード屋に行ったりしてしまう。だから、田舎のCD屋や本屋がなくなっていくのはやっぱり悲しい。

よくわからないからって耳を塞げばそれまでの自分。ちょっと背伸びして耳をすませば広がる世界。

高校2年の冬、ZAZENBOYS 3というアルバムに出会った。ZAZEN BOYSというバンドのことはそれより以前から知っており、フロントマンの向井秀徳がいたバンドNUMBER GIRLの代表的なものとZAZEN BOYSの1枚目と2枚目の音源は聴いていた。

 

それらが好きだったので、当時の新譜であるZAZEN BOYS 3を高鳴る期待とともにに地元のCD屋である玉光堂の視聴機で聴いた。一曲目から不穏なギターに乗せて「社会の窓が開きぱなし」と歌われ、その後の曲でも一貫してシュールな世界観が展開された。ZAZEN BOYSのそれまでの音源でもシュールな曲はあったが、例えば「半透明少女関係」のようなアッパーな四つ打ち、「KIMOCHI」 みたいなメロウな詩情、「CRAZY DAYS CRAZY FEELING」のようなアーバンで洒落たナンバーが含まれていて、それがフックになっていた。しかしそういう曲は、このアルバムに一曲もなかった。

 

困惑した。これは変なアルバムだ。これっていいのか?わからなかった。ただ、つまらなくはなかった。手放しで、最高、とも言えなかったが。とりあえず、買おうと思った。これはきっとクラスでも買う人はいないだろうと思ったからだ。背伸びをしたい年頃だった。

 

そして何を思ったか、このアルバムを、当時好きだったクラスの女の子に貸した。自分はこんな尖ったものを、変なものを好んで聴くんだ、というアピールをしたいという自意識をこじらせた挙句の行動だった。案の定、その女の子と付き合う夢は叶わなかった。

 

いまになり、そのZAZEN BOYS Ⅲを聴きなおしてみると、よい。普通によい。当時は、なんだかよくわからないアルバムだ、という印象が強かったが、今の自分の耳で聴くと、素直にかっこいいアルバムに思える。

 

考えてみると、「冷凍都市の暮らし、あいつ姿くらまし」というZAZEN BOYSの楽曲の中で繰り返し出てくるフレーズが内含している都市に生きる者の感じる狂気というようなテーマも、社会人になり都会で暮らし初めてからなんとなく肌で感じられ理解できるようになったものの、北国の高校生だった当時の自分にはいまいち理解できないものでもあった。冷凍都市と言っても、冬にはマイナス20度になる、比喩ではないマジの「冷凍」都市、というか町、冷凍タウンに住んでいた。

 

改めてこのZAZEN BOYS Ⅲを聴き返しバンドの歴史の中で位置付けてみると、その後のZAZEN BOYSの「ZAZEN BOYS 4」「すとーりーず」で展開されるような、よりシンセをフィーチャーしたミニマルで奇天烈な80sニューウェーブ感もある楽曲の方向性へと向かう前の、移行期にあたる作品なのではないかと感じる。

 

「Friday Night」のシンセと直線的なビートのドラムによるニューロティックなイントロからはじまり、「繰り返される諸行は無上 よみがえる性的衝動冷凍都市の暮らしあいつ姿くらまし」といういつものフレーズをかました後に前衛的かつクールなギターが入ってくる感じの秀逸さ。そして、「Tombo Game」の気だるい中にも狂気を孕んでいる感じから、「Pink Heart」での楽曲のメイキング過程を切り取ったようなセッションをはさみ、「RIFF MAN
」で法被をきたレッドツェッペリンと呼ぶにふさわしい轟音に雪崩れ込む流れの素晴らしさ。

 

全体を通して、このアルバムからアヒトイナザワにかわりメンバーになったドラムの松下敦の音がドスンと迫力があり録音が生々しい。

 

「半透明少女関係」のようなナンバーガールからの流れをくんだダンサブルなナンバーは当時から素直にかっこいいと思って好きだったが、このアルバムに入っているような曲こそ、長く聴き続けていける類のものだと感じる。

 

このように10代の頃にZAZEN BOYSⅢのような音楽に出会い、向き合うことができたのは、背伸びをする気持ちがあったからだ。自分の安全圏から飛び出して、音楽を知る、探しに行く、その姿勢があったから、世界を広げることができた。より豊かな楽しさにつながった。

 

自分の好きなものに固執して、自分の価値観、自分の安全圏にとどまっていたままでは、食べ物でいえば「駄菓子が好き」のレベルから這い上がることはできない。

 

ただ、音楽に教養主義みたいのを持ち出すのもウザい。全然よさがわからないのに、それが権威だからといって無理して聴く必要はないと思う。

 

しかし、好きな音楽から手を伸ばしその周辺や遠いルーツを模索することは、より大きな豊かな世界へと開けていることは確実にいえる。つまらない教養主義を辟易するあまりに閉じてしまうのはもったいない。閉じてしまうのは、教養主義でマウントとるために音楽聴いて悦に浸っているのと同じくらい愚かなことだ。

 

背伸びをして音楽をきく。音楽だけじゃない。背伸びをする姿勢が豊かさにつながる。文化に敬意を払う。文化と戯れる。文化の中に飛び込む。それは素敵なことだろう。退屈は敵。楽しい方へと進みたい。

ゲスい音楽。The ピーズ 「マスカキザル」について

人間、生きていれば、色々な気分になることがある。品行方正で、良識のある人間でありたいとは思うが、毎日、常にそうであるのも難しい。 時には、ゲスい気分になることもある。

 

情けないことかもしれない。私はゲスい気分を捨て去り生きれるほど悟りの境地には至れていない。むしろもがいている。

 

ゲスい気分の時は、ヤケ酒を飲むような勢いで、聴いてしまう音楽がある。それは、The ピーズ、1990年のアルバム、「マスカキザル」。

全10曲、28分。驚くほどに、ゲスい曲しか入っていない。

 

 

The ピーズは、男の情けなさ、やるせなさ、哀愁といった湿度の高いものを、乾いたロックンロールサウンドに乗せて燃え上がらせる3人組バンド。そして、The ピーズの中でこのアルバムほど、ゲスい曲だけで占められたものもないと思っている。スリーピースのパンキッシュなロックンロールに乗せて、モテ要素ゼロのゲスい情けなさが叫ばれる。

 

とりあえず、曲目を見てみれば、そのゲスさの一端が垣間見えるかと思う。

 

1 いいコになんかなるなよ

2 どっかにいこー

3 けばみ

4 やったなんて

5 マスカキザル

6  オナニー禁止令

7 Tel してこい

8 ぼけつ

9 いんらんBaby

10 バイ菌マン

 

 

それぞれの曲で歌われていることの字面だけ受け取れば、粗野で露骨な性的欲求の吐露でしかない。

 

しかし、曲として聴くと、その根底にやるせなさ、無常感、苛立ちの気分があるのがわかる。

 

性的にオープンで、豪快な人たちのやっている音楽ではない。むしろその逆で、シャイで繊細な人たちのやっている音楽だから、やぶれかぶれ感と虚しさと欲望と浅はかさが混ざり合っている。

 

1曲目、「いいコになんかなるなよ」では

 

“いいこになんかなるなよ

頑張ったって無理だ

変わろうたって無理だ”

 

“君はカスだよ

かなりカスだよ

どうせカスだろ

かなりカスだろう”

 

と歌われる。

 

坂口安吾の堕落論のようだ。

善良であろうとしたって無駄だぜ、本質はカスなのだから。堕落することで救われるのは、戦後の闇市の混乱のみならず、普遍的なことか。

 

 

http://www.youtube.com/watch?v=mrwVM4xLqL0

いいコになんかなるなよ、の他、名曲「けばみ」み含むライブ映像

 

6曲目、「オナニー禁止令」。この曲の中のあるフレーズは、フィッシュマンズの「BABY BLUE」という曲の中で引用されている。 表面的な音楽ジャンルは全然違うが、Theピーズとフィッシュマンズの意外な、興味深いつながりを知ることができる。

 

 

 

http://www.youtube.com/watch?v=-hNzSem1agA

オナニー禁止令、ライブ映像。

かっこよすぎてやばい。

 

 

 

 

http://www.youtube.com/watch?v=pfCt0J8GKCI

フィッシュマンズ、BABY BLUE。「意味なんかないねー 意味なんかないねー」の部分がオナニー禁止令からの引用。

これもかっこよすぎ。いつまでも浸っていたい。

 

 

 

 

 

8曲目「ぼけつ」は、これもまたすごい。

年がら年中墓穴掘ってるぜ、っていう曲なわけだが、”ぼけつ”が何を意味するか、以下のように歌われて、わかる

 

“おけつの近所にあるぼけつ”

 

「ぼけつ」を掘りすぎて、墓穴掘ってるぜ、という。

 

そして、アビさんこと安孫子義一のギターリフがかっこいい。

 

 

9曲目「いんらんBaby」では、異常性愛な欲求が歌われている。

 

“名前なんかどうでもいい 育ちなんかどうでもいい  いんらんBaby 独り占め  イクわよって 言ってよね”

 

と始まり、

 

“遠くのほうの別荘で  縄で縛って飼いならし  監禁放題したいぜ”

 

とくる。

 

http://www.youtube.com/watch?v=yr4PYgIRMVQ

いんらんBabyを含むライブ映像

 

欲求のままに果たした後の、あの後ろめたさ、あの嫌な感じ。それをわかっていながらも、そういう願望を持つ自分に苛立ち、開き直り、情けなく思ってウダウダしている。そういう願望自体にも嫌気がさしたり、またそれを抱いたり、悪あがきしている。そんな音楽。

 

30分のロックンロール。心の慰め。 「マスカキザル」、名作です。

どんな音楽聴きます?の質問に対する回答について

どんな音楽聴くんですか? 私はこの質問を受けると少なからず身構えます。多くの場合、相手に合わせて回答をチョイスするのですが、相手が全くの初対面の場合だと、難しいですね。なんと答えるのがベターなのか。

 

そんなの好きなものを正直に答えればよいのだと、あなたはおっしゃいますが、これがむずかしいですよ、私みたいな自意識をこじらせてる人間には。

 

前の職場の時、飲み会でほとんど話したことのない隣の部署の男性(40代)と隣になり話すことがあったんです。その人の印象は、超真面目で博士みたいな感じで、普通にJポップとか聞いてるのかなと思っていたんですが、話してみるとメチャクチャ音楽詳しかったんですね。エルメット・パスコワールとか、ジョン・ゾーンとか聴くとかで、ビックリしました。私も、そういう硬派なジャズ界隈の音楽聴きますって答えたら、相手もびっくりして、「EXILEとか聴いてると思ってた」って言われました。おれって、EXILEなんか聴くように見えます? まあ、お互い全く印象とは違う音楽を聴いていたんですね。たぶん普通の職場(マスコミ、エンターテイメント関係でない普通の企業)での飲み会での20代男の回答としてはありなのかな、EXILEは。

 

 

僕の回答としては、「チャットモンチーとジャズかな」と答えることが多いです。実際の聴いてる音楽の8割はジャズ界隈なのですが、ジャズって答えるとこいつ気取ってるって思われそうで、チャットモンチーっていう少しスノッブなものも入れて中和しようかなと。だけど、チャットモンチーしか聴きませんとは絶対に言えないのです。ここに自分の悪性の自意識がハムスターなみに空回りしてるのがわかるでしょ。

 

 

だいたい高校生ぐらいで背伸びしたくなって、すこしコアな音楽、難しい音楽ってのに触れる機会が出てくるんですかね。ロックとかでもロッキンオンとかの雑誌読んだり、インディーズバンド聴いたりして。思い出すんですが、高一の時、チャゲアスの新作アルバムを買ったということを学校で話していたら、別の友達に失望されたということがありました。まあそいつも聴いてるもんといったら、ボンジョビとかだったんですがね。

 

先日友人の結婚式で使う音楽として、おすすめの曲を持ち寄ろうということで12曲ほどのリストを提出したんですね。その内7曲をジャズ(インスト)が占めたんですが、すごく不評で「この選曲は逃げだ」とか言われました。まあ「逃げ」でジャズ聴いているってところもありますね。大体好きな音楽っていう質問にジャズって答えると、相手はツッコんでこないんですね。大抵の人はジャズ聴きませんから。自分で言うのもなんですが、自分ぐらいの歳の人間としては、それなりにジャズを聴きこみ、結構詳しいつもりでいます。だから、ジャズについての知識のない人間との会話では、それ以上自分の音楽における文化度の浅さが露呈してしまう可能性がすくない。よって、好きな音楽の回答としては、ジャズは無難な選択なのです。

 

 

ジャズが無難な証拠として、居酒屋、ファミレス、カフェといたるところで、ジャズはBGMとして流れてます。大部分がインストである、歌詞あったとしても英語詞であるということ、そして程よいカジュアル感がジャズの受け入れられている要因だと思います。クラシックほどオーセンティックではないが、ポップス、ロックほどスノッブな印象も与えないというところがBGMとして氾濫している要因なのです。

 

 

しかし、ジャズを本当に好きで聴いているのか、理解できてるのかって自問すると、ちょっとわからないですね。まあ、そんなに音楽に対してシリアスにならなくてもよいという声もあるのはわかるんですが、実家の自室の畳の上で、長渕やチャゲアスを胡坐をかいて聴いていた中学時代の方が、音楽を欲していたと思うし、真摯に向き合っていたと思います。

 

 

最近コアな音楽を好む友達ができたので、音楽に対して少し意識的に向き合うようになりました。難しいっていわれる音楽とか、芸術性とか大衆性とか、そういうものについて次は書いてみようと思います。

 

では、来週までの宿題、以下の1つ目のリンクは映画「サウンド・オブ・ミュージック」の劇中歌の「My Favorite things」、2つ目のリンクはジャズミュージシャンのジョン・コルトレーンが「My Favorite things」を演奏しているものです。来週までに聴き比べてください。

 

 

https://youtu.be/wQZrXi9huZkhttps://www.youtube.com/watch?v=33o32C0ogVMhttps://youtu.be/mHgPZfNlI6I

 

2つ目の演奏わかりましたか? アートって素晴らしいものですね~、では、さようなら、さようなら